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第131話:ナイキ会談1

前話のマナ姫のステータスが少し低かったので上方修正しています。

またステータスに関する表現を一部訂正しております。

修正前にご覧の方にはご迷惑をお掛け致します。

 新しい朝がきた。

 カジト港に寄港したアイラ号はマハを発って以来初めて港で夜を明かした。

 目的は大陸の最新情報の入手の為のシーマ領主との会談、そして可能ならば中央への渡りをつけることであった。


 シーマ家当主リューベルは得体の知れない来訪者について調べるため妹マナを派遣したが、その報告を受けて彼らが十中八九本物のサテュロス大陸からの使者であると確信し、迎え入れる前に家臣を集めての会議を早朝から開いたのだが・・・


------

(リューベル視点)

 マナを使者に立てて正解だった。

 申し出たのはマナであるが決断したのは私自身だからその決断には自信を持つべきだろう、よくやった私!

 正直3割くらいは本物だろうと考えていたが、実際にマナの報告を聞いてみれば、本物で間違いないと感じる。


 他の家臣を使者に立てて居れば、録に調べもせずにダティヤナやニャベシマの間諜だと報告していたに違いない。

 何故ならば・・・


「リューベル様!マナ姫様は聡明な方なれど女に過ぎません!その報告がどの程度信頼できると言うのですか!」

「リューベル様、ここはもう一度使者を立ててやつばらめがニャベシマの間諜であると証明するべきかと」

「ニャベシマやダティヤナではなくヒヨウの連中の可能性もございます、何卒ご再考を・・・」


 家臣のうち、中央の調停を受けた時にも継戦を主張した者達が、しきりに陰謀論を主張する。

 マナの才を直感的にでも理解している者達は口を閉ざしているが、陰謀論を否定する者はいない。


「ならん、今伝えた通りだ。本日午後一番サテュロスよりの使者殿と引見する。過不足無く支度し使者殿に当家の気風というものをお見せする。結束に欠けるところを見せてくれるなよ?」

 ジロリと睨み付けると騒いでいた家臣達も黙る・・・かと思いきや。

「しかしリューベル様!」

「くどい!」

 まだゴネる者がいたため、らしくもなく声を荒らげてしまった。

 そしてさらに続く声。


「おいおい、珍しいな、兄貴が朝からでけえ声出してやがる」

 その声に、その場に居るもの全員が黙り、声の主の方を見た。

 アソの祭りに参加するために留守にしていた。

「ファイバー、帰っていたのか?」

「おう、昨夜遅くにナイキについてなさっきまで女房と飲んでたんだ」

 言われてみれば酒精の臭いが少しする。

 といっても、ファイバーはザルのためそう酔ってはいないだろう。


「町のほうで何か面白そうな噂が立ってたが、本当なのか兄貴?」

 どうやらすでに、ファイバーも鉄船の話を聞いているらしい。

 まぁ目立つ船であるし、ここはカジトと近い一日あれば噂も届くか。

「あぁ昼にはここに来る」

 伝えると、ファイバーは実に気持ちのいい笑顔を浮かべた。


「アーハッハッそうかそうか!ようやくシーマにも明るい話が舞い込んできたって訳だ!」

 ファイバーにはことの重要性が分かっているらしい、まだ明るい話になるかはわからないが、サテュロス大陸からセントールまで航行してくる様な技術を保有している以上、それ以外の技術が皆無ということはないだろう。

 こちらに何を要求してくるのか、そして何をもたらしてくれるのか?

 今日の会見で友好的な関係を築き、シーマ領のひいてはセントールのために引き出せるものは引き出したい。


「そうだな、シーマのためにも成功裏に済ませたい」

「その通りだ。だってのに、どうしてお前らが反対してやがる?」

 シーマ第一の武辺者、鬼の異名を持つファイバーに睨まれて萎縮しないものなどいようはずもない。

 先程まで盛んに陰謀論を叫んでいた者達も押し黙った。


「それで兄貴、迎えに行くのは誰なんだ?」

「あぁ、昨日に引き続き、マナに行ってもらう、それなりに打ち解けていた様だし、家臣たちはさっきの調子でな・・・」

 ファイバーが受けいれ賛成に回ったことで、大勢は傾いた。

 後は今日の会見を無事にすませるだけだ。


------

(アイラ視点)

 夜が明けた。

 今日は昼からシーマ領主との会見を控えている。

 その二時間前には迎えも来ることだろう。


 イシュタルトでは招く側であることが多かったけれど、今回はアウェイの会見だ。

 誠意というものを見せないといけないだろう。

 そのためにもまず身支度はバッチリ決めていこう。

 ボクたちが舐められることは、サテュロスが舐められるということだ。


 家臣には残念な連中も居るらしいけれど、こちらはサテュロスなりの正装で行こう。

 政治的な会見ならばボクはあまり派手でもない赤と白基調のドレス姿、ユーリは金糸で刺繍が施された長めの黒コートに、胸もとにレースのタイがあしらわれた白いシャツ、そしてパンツはややピッタリしたタイトなデザインの七分丈、そしてブーツを履く。


 初めはセントールの服飾に寄せて神楽デザインの和風ドレスを着ることも考えたのだけれど、マナ姫から文化が違うと判りやすい方がサテュロスからだと信じてもらえると伝えられたので、信じることにした。


 土産物については、技術的には影響の少ない衣料と食料を中心に提示することにした。

 魔石回路や蓄魔力槽などの技術は特に、セントールの勢力図を変えかねないので秘匿する。

 戦争をしなくなってから食料の増産に力をいれているらしいので、場合によっては実際に領地を検分して何か作付けできそうな植物の移植も指導できるかもしれない。


 昨日食べてもらった菓子類も喜ばれたので砂糖について訪ねた所、セントール大陸にはサトウキビがなく、テンサイが主な砂糖の供給源となっているが、シーマ領の物は糖度が特に低いそうで、砂糖は貴重品らしい。

 また穀類の生産もセントールで主流のコメの生産には適していない土壌が多いらしく慢性的な食糧不足、それでも海があるのでその恵みによって何とか成り立っているとか・・・


 そこで小麦かコーン、の移植が出来ないかと考えている。

 コーンはハルピュイアでは主流の農作物でサテュロスでも一部地域で比較的古くから生産されている。

 土地での生産が可能ならばセントールでも定着するだろう。


 衣料については将来貿易を行うことになったときのために大きめの布地をいくつかと、サンプルに縫製済みの衣服をいくつか持ってきているけれど、こちらは作りが大分違うので受け入れられにくいだろう。


 いろいろ支度(といっても元々収納しているのでシーマ側に提出するお品書きを用意しただけだけれど)をしていると、すぐに時間は経った。

「ユーリ様、アイラ様、シーマ領からの使者がお見えになりました」

そう言って部屋をノックしたのはソルだ。


 甲板に常に誰かがいて、使者の到着を見守ってくれていて、今はソルが当番だった様だ。

「ありがとうソル、エッラを連れてっちゃうから、ベアトリカのおやつとかお願いね」

「はい、アイラ様」

 ソルはみている方が照れる位素直でかわいらしい笑顔を浮かべて首肯く。


「それじゃ行こうかユーリ、エッラとフィーも引継忘れはない?」

「エスコートさせて頂けますか?僕のお姫様」

 エッラとフィサリスが頷くのを確認すると、珍しく芝居がかった態度でユーリがボクに手を差し出す。

 こういうのってたまにされると弱い、顔が熱くなったのがわかる。

 てか、なんでこんなタイミングで・・・受けるけどさ


「ありがとう、これからお仕事モードだし、少しアイラ分を補充させて」

 ボクの手に口を寄せるユーリ、アイラ分とやらは肌から出ているものなのだろうか?

 朝からずっと一緒にいたのじゃ補給されてなかったのかな?

「ボクも余所行きモードしないとだから緊張するんだけど、それは?」

 ユーリからのお姫さま扱い、照れ臭いので僅かに形だけの抵抗をして見せると、ユーリは内心嬉しいボクの心情なんてお見通しな様で、微笑みながら口吸い。

 以前と違いユーリの身長が大分高いので、立ってキスをするときボクは結構上に首を傾けないといけない。

 とはいえ、ほとんど毎日のことなので苦はなく、頭の中に何か幸せを感じる物質がドバドバと溢れてくる。


 時間にして5秒足らず。

 長いとも短いとも言えないキスは、主導権を握ったユーリの方から離れた。

「これでどうかな?」

 つやつやしちゃってさ、これって君も『アイラ分』補給したんじゃないの?

「まあ、いいけど・・・」

 ボクも気持ち良かったけれど、それを悟られるのは気恥ずかしくて(エッラ相手はどうってことないけれど、ソルとフィサリスもいるしね)顔だけ不機嫌にして返事をすると、そんなボクの内心をお見通しなのかユーリはにこやかに再度手を差し出した。

「行こうか、お姫様」


---

 甲板まで上がると、使者はもう港まで入ってきていた。

 まだ船着場までは到着していないので、ソルたちはかなり遠い所に見えた時点で呼びに来てくれたのだろう。

 お陰で使者達をお迎えすることができる。

 ユーリはボクをお姫様抱っこすると、ひらりと甲板から船着場へと舞い降りた。


 今日随行するエッラとフィサリスが続き、さらにお見送りにとナディア、ソル、トリエラが続く、他は甲板の上からお見送りだ。

 マナ姫が言うには神楽はとてもセントール人好みの雰囲気と顔立ちらしいので、足元を固めるまでは余り人目に晒さない方が良いと助言されたので、艦内で見送りを済ませてきた。


 やがて使者殿の乗った馬車が船着場までたどり着いたのだけれど・・・

「お迎えに上がりましたユークリッド様、アイラ姫様」

 出てきたのは昨日と同じマナ姫ともう一人

「おう聞いてた以上に可愛らしい姫様だな、うちのも大概可愛いと思ってたがこりゃあたまげたな」

 と、マナ姫を撫でながらボクを見てニコニコとした人好きのする笑顔を浮かべる男性。

 ノヴォトニー以上マグナス先輩未満位の上背に筋肉質な体つき、一目で鍛えられるとわかる。

 鑑定の結果も


 ファイバー・シーマ M27ヒト/

生命1527魔法18意思611筋力72器用58敏捷42反応69把握65抵抗41

適性職業/哄笑する鬼 武士


 数値をみればマナ姫よりも強く、勇者相当と思われる適性も有している。

 そしてその名前と態度はシーマの領主家の人間だと示している。


「マナ姫様のお兄様でいらっしゃいますね、お初にお目にかかります、わたくし昨日からマナ姫様とはお友達付き合いをさせていただいておりますアイラ・イシュタルト・フォン・ホーリーウッドです」

「ユークリッド・フォン・ホーリーウッドです」

 二人で挨拶すると、ファイバー氏も再度ニカリと笑い。

「シーマ領主リューベルの弟、ファイバーだ出来れば末永く宜しくしたいな(それとうちの若いのが何か仕掛けて来るかもしれない、船の守りは十分か?)」


 と、挨拶ついでの様に周りには聞こえない位の声でユーリに囁いた。

「なっ・・・!?」

 握手しながら、驚いた声をあげたユーリはしかしすぐに冷静な彼に戻る。

「いきなり強く握るので驚いた声を出してしまいました。これがシーマの流儀ということですか?ご安心を、驚きましたが大丈夫です」

「それは何よりだ」

 と、ファイバー氏はボクに目配せして促す。


 だからボクも見送りに来た三人に予定外の挨拶をする。

 彼女達がボクにとってどれだけ大切かを、どこかでみているかもしれない刺客達に見せつける。

「ナディア、アリエス達と留守の守りをお願いね、ソルはベアトリカが暴れない様に相手をしてあげて、トリエラはアイリス達の相手を宜しくね」

 いいながらひとりひとりの背中に腕を回して抱き寄せる。

 照れたトリエラが身をよじって喜ぶのが、ボクたちのハグをとても自然なものに見せてくれたはずだ。


 大丈夫、うちのメイドたちは汎用セイバー相手なら互角に戦えるし、いざとなればセイバー装備も持たせている。

 自分自身をそう宥める。

 わざわざ伝えてきた以上、シーマ領主家の意向ではないはず。

 だとすれば仮に武力で仕掛けてきたとしても規模は小さいはず。


 そして、家中のはねっ返りのことをわざわざ伝えてくるということは、この期にその連中を処罰したいということだろう、ならばこちらとしても恩を売るチャンスということだ。

 昨夜も守備はしていたし普段通りにしていればそう下手をうつことはない、はずだ。

 

 まったく心配じゃない訳ではないけれど、ボクは彼女たちを信頼している。

 あまり長くなると怪しまれる可能性もあるので、そのままボクたちは馬車に乗り込んだ。


「すまないな、出掛けに不安にさせる様なことを伝えた」

 馬車が走り出すとすぐにファイバー氏は謝ってきた。

「いえ、それよりも状況を教えて頂きたいのですが?」

 馬車の中にはボクとユーリ、マナ姫とファイバー氏の四人だけが乗っていて、エッラとフィサリスは外で歩いている。

 こちらではメイドは同乗しないらしい。

 お陰で相手の侍女もいないのでこうやって秘密の話もできる。


「あぁ、俺は昨日は留守にしてたんだが、街中に噂が溢れててな、どこかの領地の船がカジト港についたそれはどうも領主様にご縁談があるらしいってな?」

 予想外の言葉にボクは目を白黒させる。

「珍しくコイツがヤル気を出したのが良くなかった。俺も出掛けに兄貴から聞くまで信じちまってたくらいだからなガハハハ」

 バシバシとマナ姫の後頭部を叩いて笑うファイバー氏、マナ姫はいやがるけれど、顔は笑っている。

 兄妹仲は良いらしい。


 どうやら迎えに出た使者が普段は表にでないマナ姫であったことで、正室を亡くして以来独り身の領主リューベル氏の縁談の類だと噂が立っているという。

 さらに、家中ではボクたちのことをサテュロスではなくセントール内のどこかから来たと考えるものが多数で、特に譜代の者ではなく、先の戦争でオトゥムやクマビゼンから寝返った者たちが、これを期にシーマがダティヤナやニャベシマとの仲を強化することが、自分達の零落に繋がるのでは?と危惧しており、すでに少数の手勢を集めてカジト港に忍ばせているらしい。


「兄貴からはサテュロスの船で間違いないから、失礼のない様にと何度も言ってるが聞き分けた様に思えなかったんでな、俺が来た・・・。アイツら姫さんたちを悪者にするためならコイツごと殺そうとか考えかねないんでな、そんなことになったらカジト港全域が壊滅しちまうし、コイツも兄貴もキレるとヤバイからいらんこと刺激したくないもんでな」

 と優しい目をマナ姫に向けるファイバー氏。

 ボクたちの心配というよりはマナ姫の心配、それはそうだ。

 母違いとはいえ妹なのだから、大切にもするよね。


 聞き出した情報、考えうる「敵」の攻め口を暁天からデネボラを通じて神楽に伝える。

 ファイバーさんから聞く限り、集められたのはごく少数の破落戸紛いの食い詰め者たちが中心なので、戦闘を仕掛けてくるよりは、そいつらに問題を起こさせて、その原因をこちらに押し付けようという肚だろう。

 それで調査と称して艦を押さえようとしてくるというのがファイバー氏の見通しだ。


 それでファイバー氏の部下であるムサシ・ニェロが指揮する精鋭6名が有事に備えてカジト港の倉庫に詰めてくれるらしい。

 といってももしもリトルプリンセス級に敵が侵入した場合に証拠の偽造等を許さないための見張りだそうなので、艦の外で戦闘になった場合には介入しないらしい。

 なのでこちらもそれらを踏まえ、神楽を通じていくつか指示を出した。


 やがて、馬車が止まったのは一時間も後のことだった。

 馬車に乗るのはただ貴人を歩かせない為で、民衆にみっともなく走る姿は見せられないとのことで、速度は徒歩のそれと変わらず。

 ナイキ城につくまでかなり時間がかかってしまった。


 お陰で今日どういう態度をとるのかとかシーマ側が望む対応について、マナ姫、ファイバー氏とじっくり話すことが出来たけれど

 砂利を敷き詰めただけの街道をガタガタと揺れるサスペンションも、魔石による空間補強もない馬車で一時間揺さぶられたボクの臀部は、久々のダメージを受けたのだった。

あとがきで補足するのはよくないのでしょうが

アイラとユーリはマナ姫とファイバーのことを信頼し始めていますし、マナ姫もアイラのことをすでに信頼しています。

これは本人達の注意が足りないというよりは彼らが立場、外見に相応しい振舞いを心がけたためにお互いに強めの好意を抱いたためです。(カリスマの効果)

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