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第99.8話:いつだって大体平和な彼女の日常

 アイラたちが戦争にいって、帰ってきてからしばらく経った。

 先週は、大水練大会のためにいろいろ賑やかだったおかげで、私もだいぶ普段の調子を取り戻すことができたと思う。

 最初の2日も普段の授業と違って、ちょっと遠いけれど目に見える場所にアイラがいたし、3日目以降は王族席にお邪魔させてもらったから、ユーリをはさんで隣か、ユーリと二人でアイラを挟むかでずっと座ってた。

 おかげでかなりの時間アイラにくっついていられたし、ほかの皆だってすごくいっぱい一緒にいられた。

 サリィおねえちゃんや、エミィおねえちゃんとも結構久しぶりに長い時間一緒にいられたし、王様や王子様たちとも久しぶりにご挨拶した。

 そして今日は週があけて1週間ぶりの普通のお勉強。


 今日は朝から幸先がいい。

 アニスはご機嫌だったから朝からチューさせてくれたし、ピオニーは朝からおきてていってらっしゃいのチューをさせてもらえたし・・・。

 何で妹ってあんなにかわいいのかな?

 アニスしかいなかった時は、アニスが甘え上手だし、そのくせなかなか私には甘えてくれないから、甘えて欲しくってやきもきしたけれど、ピオニーが生まれてからはアニスもピオニーがかわいいし私がピオニーをかわいがってると、私が呼ばなくってもそばによってきてくれるから二人を一緒にかわいがれる。

 そしてアニスもピオニーもかわいいんだけど、ピオニーをかわいがっている時のアニスは倍かわいい。

 だから私はピオニーを抱っこしてると、すごく幸せ。


 ん・・・と?何の話だったっけ・・・?


 ああそうだった。

 そういうことで私は今日は朝からとっても上機嫌で授業を受けている。

 今は、不整地での治療拠点の構築についての授業中。

 でこぼこ道やぬかるみのある場所でどうやって治療拠点としてのテントやベッドを設営して、清潔に運用するかの実習中だ。

 先週の水練大会の後水を抜いただけの円形闘技場はぬかるんでいて、魔法で戻せばすぐに乾くのに、そうせずにわざとどろどろのぬちょぬちょになっている。

 そんな場所での授業なので、私たちは水着に着替えて現在は杭を打ってみたり、板を張ってみたりと苦労している。


 私の班は私とトリエラちゃん、それにアイビスちゃんとメイドのフランちゃん、それにアンリエットちゃんという子がいる。

 班長はアイビスちゃんだけれどほかの班と違って男の子が0人なのでこういう大工さんみたいな実習はなかなか厳しいものがある。

 補助魔法課のうちのクラスではほとんどの班は4人班、ただアイビスちゃんと私が希望して一緒に組んだので、メイド枠とで4人いっぱいいっぱいまで女の子になってしまった。

 クラスの男子を女子3人に対して1人ずつになる様に割り振ったあと、残っていたのがアンリエットちゃんだったので、うちの班は女の子5人になったのだ。


 こういった大工仕事的なものになるとどうしても皆弱くって、それでも幾分かましなトリエラちゃんとフランちゃんが中心になってやってくれるけれど

 フランちゃんは、私やアイビスちゃんよりは高いとはいえあまり背が高くないし、トリエラちゃんは・・・

「ニャー!?アイリスさまー、手を思いっきり叩いちゃいましたー。」

 涙目でそう訴えるトリエラちゃん、集中力を欠くとまだほとんど治癒魔法を使いこなせないトリエラちゃんにあわてて治癒魔法をかける。


 トリエラちゃんはすらっとして美人さんなんだけれど、なんというかそれを補って余りあるほどおっちょこちょいで、そんなところもかわいいんだけれど、メイドさんなのになんとなく頼りにならない。

「はふぅ・・・申し訳ございませんアイリスさまー。」

 しょぼんとしてお耳がへにゃっとして後ろに倒れている。

 涙目になって申し訳なさそうにしている。


「いいよいいよ、私たちがぜんぜんこういうのできないのがいけないんだよ。」

 私は本当にぜんぜんこういうのもダメなのでトリエラちゃんを責めたりできない。

「そうだよ、私もアイリスちゃんもカナヅチ持ったことなかったし、二人に使い方教えてもらわないと、まっすぐ打てなかったくらいだし・・・。」

 同調して言うけれど、アイビスちゃんは結構手際良く杭に角材を打ち付けている。

 少なくとも私やエットちゃんより数段巧い。

 アイビスちゃんは少なくとも私よりもお嬢様育ちのはずだけれど、こっそりどこかでやったことがあるのかもしれない・・・。


 そういうわけで私たちは現在腰近くまでぬかるみにはまった状態で設営をしているのだけれど、それでも私は上機嫌。

 本当に楽しいし幸せ。

 皆でこうやって作業するのもいい思い出になりそうだって前向きに思える。



「はぁぁーお腹すいたぁ」

「本当にねー」

「でも、お腹がすごくすいているからきっとお昼ご飯もすごくおいしいですよね。」

 3人で口々にいいながらメイドの二人を連れて食堂に入る。

 今日は実習だったので休憩時間がずれ込んで、いつもよりも45分遅い、お腹がペコペコなのはもちろんだけれど、ずれ込んだ結果ほかの組はもうお昼休みが終わるところなので私たちは普段は人気があってなかなか入れない一番人気の食堂に足を運んでみた。


 ここは2年前にアイラが出資して新設された食堂で、なんとカグラちゃんやフィサリスちゃんが考えた料理の数々が完成度を上げるために提供されているのだ。

 食文化の発展のためという名目で食材と人件費はすべてアイラが費用を出していて、食堂の中で席数20席と最も少ない上メニューに当たり外れがあるけれど、実質無料で提供されているためかなりの人気となっている。

 普段ならなかなかありつけないけれど・・・、今日は座ることができた。

 本当はホーリーウッド屋敷に住んでる人たちは裏にある休憩部屋に入って食べることもできるのだけれど、これはアイラやカグラちゃんが味の出来をたまにチェックするためのものなので、なんとなく私は遠慮している。


 でも今日はもう普通に座れるしいいよね?

 そう思ってやってきた。

 ここが盛況なのは、無料で提供されていることも大きいのだけれど、新しいものを食べられるという真新しさからだ。

 贅沢なものに飽きた貴族家の人もよくやってくるらしい。

 ただ貴族だからって席が空いてないのにやってきても優先して座れるわけでもなく、仮に何かの便宜を図って順番を譲る、譲らせるという行為をしようとしても、店員さんに見られたら双方出入り禁止になるため、皆ルールを守っている。


「私ここにくるの初めてです、一回食べてみたかったんですよねー」

 と、エットちゃんが楽しそうにつぶやく、お耳はピコピコ尻尾もパタパタと興味津々みたい。

 私たちは席に座るとメニューを見てみる。

 毎日ちょっとずつ変わるメニューは今日は麺料理パスタが中心みたい。

 メニューには表音文字で『ラーメン』『ウドン』『サラウドン』『ヤキソバ』『ソーメン』それに『ドラグニカ』というものが供されていた。


 最後のドラグニカはフィサリスちゃんの郷里の料理だったかな?

 イルタマを潰して、小麦粉を混ぜて作った麺に、イノシシ魔物肉をそぼろにしソペなどで味付けしたモノと、オクラなどの季節の野菜を一緒に載せて一皿にまとめたもの。

 喉通りがよくて、暑くて食欲がなくても結構ぺろりと食べられちゃう。

 味はちょっと濃い目で、香辛料でピリっと仕上げているものだ・・・ったはず。


 どれも夏場にはうれしいすっきり食べられるもの、今日は当たりだとおもう。

 パスタは嫌いな人も少ないしいいよね。

「私はソーメンにしよ、今日暑いし。」

「じゃあ私はヤキソバにしようかな。夏って感じするし。」

 と、私とアイビスちゃんは早々に注文を決めたけれど・・・。

「えっとこれって・・・どれがどういうお料理なのでしょうか?」

「アイビス様は本当にカグラ様のところで召し上がった食べ物が妙にお好きですよね」

 とエットちゃんは不思議そうにして、フランちゃんはちょっとあきれた顔をしている。

 一方のトリエラちゃんは尻尾をパタパタと振りながら、サラウドンか、ラーメンかで迷っているみたい。

 お屋敷で試作品食べた時気に入ってたもんね。


「えっとねー、私が頼んだソーメンはぁ、チュルチュルーってたべられて、冷たくておいしいの、お豆で作ったソルっていう調味料を味付けに使ってるの。ラーメンはチュルチュルって食べられて、ちょっと味が濃い目のパスタ・・・味は頼んで見ないとわからないかも。サラウドンは油で揚げたパリパリしたパスタにとろっとしたスープをかけて食べるの、ウドンはあったかくてやさしい味付けのパスタだよ。」

 私がそこまで答えると、アイビスちゃんが続きを教えてくれる。

「ヤキソバはやわらかいメンを油を引いた鉄板で炒めて、味の濃いソースで味付ける食べ物だよ、エットちゃんは味付け濃いの苦手だし、ウドンかソーメンがいいと思うな。フランは喉が細くてメンがよく詰まるから細メンで喉通りのいいソーメンかサラウドンがいいと思う。」

 にこやかにいうアイビスちゃんにたいしてフランちゃんはちょっと不思議そうにしている。


「どうしてアイビス様はこの珍しい料理の数々を覚えられるのですか?わたくしは、ケーキ、クレープ、ワッフルくらいしか覚えられておりませんのに・・・。」

 とフランちゃんはアイビスちゃんの記憶力に舌を巻いている。

 確かに、お屋敷の人たちはたまに食べてるからわかるけれど、アイビスちゃんなんてたまにしか食べてないはずなのに・・・。

 

「ほら、カグラちゃんの作るお料理おいしいじゃない?一回食べたらファンになっちゃって忘れないの。」

 とアイビスちゃんは微笑んで、ちょっと恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 それからみんな思い思いに注文して、運ばれてきた麺料理パスタを食べた。

「ふぁー、美味しかった。でもあれだね、やっぱりカグラちゃんが作った方が美味しいね?」

「でも、ルクスの方から安く干し魚が入ってくる様になって、ご馳走のレパートリーが増えましたよね、前よりもこういったあっさりした汁物や脂身の少ないさっぱりした魚肉が食べられるので飽きが来ませんね」

 と、アイビスちゃんもエットちゃんもご満悦、口には出していないけれどフランちゃんとトリエラも満足そうにため息をついている。

 さてこの食堂は言ったとおり基本は無料、だけれど満足したならお布施を行うことができる。

 出入り口に投入口があり、好きな金額を投入することができる。

 これは新しい料理の普及に役立てるために使われる資金になるのだとか・・・。

 ここは王族であるアイラの差配するお店で、あまり際限なく投入されるのもコネを目当てにする人がいたりしても困るからと0~1000ナーロまでと決められているけれど

 結構たくさんの人が満額である1000ナーロを投入していくらしい。


 というのも、ここの料理の大半はまだイシュタルトでもホーリーウッド屋敷の家族とカグラちゃんに振舞ってもらったことのある人たち、それにこの食堂を開くに当たってカグラちゃんから教示を受けた人たちしか知らないもので、その上どれも美味しい。

 軍官学校には貴族の子も多いし、いくつかある食堂は一番等級の低い場所でも、おなかいっぱい食べようと思うと1食1000ナーロは超える。

 高い食堂だとお昼で3000ナーロ超えるらしいし・・・。

 それでも学校外で同じ程度のものを食べるのと比べると3割以上安いらしくて誰も文句は言わない。

 つまり1000ナーロ入れても損しない上に、貴族の子たちも珍しいものが食べられて家族への土産話になるのだとか・・・。

 それもアイラの直営だから、自慢できる類の。


「お腹ポンポンになってしまいました。恥ずかしい・・・。」

「ねー、こんなに美味しいし量も結構あるのに、1000ナーロ以上払わせてくれないんだよねー。」

 エットちゃんは、食べていたウドンみたいに白い肌を赤く染めながら恥ずかしそうにしている。

 一方アイビスちゃんはご満悦な様子でフランちゃんに財布を用意させている。

「美味しかったねー、今日はパスタ類だったし、あたりだったよね。」

 私はソーメン、アイビスちゃんはヤキソバ、エットちゃんはウドン、トリエラちゃんはラーメン、フランちゃんはサラウドンと別々のものを注文して、みんなペロリと平らげた。

 ドラグニカは誰も注文していなかったけれどニンニクが使われているから、午後の授業を気にして食べられなかっただけで、これも美味しい。

 お昼の後は眠気と戦いながら残りの座学の授業を二枠受けてこの日の授業は終わり。


 放課後は私とトリエラちゃんは西のシュバリーエールのサロンに、アイビスちゃんとフランちゃん、エットちゃんは南のサロンに顔を出すのでお別れとなる。

 やっぱりアイビスちゃんも、最初は校門、その次は昇降口のところでヒースくんを待つ様にしていたのだけれど、どうしても人ごみができちゃうとかで、私たちと同じくサロン内で待ち合わせをすることにした。

 エットちゃんはアイビスちゃんと同じ組になったことと、婚約者であるオーティス君が「南侯の与力」を標榜しているので、南のシュバリエールに所属した。


 円形校舎に入ってすぐの階段から3人は上に昇って行き、私たちは少し歩いてからの階段。

 サロンにつくといつも大体みんなそろっていて、私たちが合流してから20分くらいお話してから退出する。

 西のサロンにはもう何年もうちに出入りしているシリルさんや、マガレちゃん、ラフィネちゃんもいて、最近お知り合いになった私たちと同じ双子のロリィちゃんとエリィちゃんもいるので話相手には困らないというか、もっともっとおしゃべりしたくて、帰る時間になってもお話が終わってないとき、翌日がお休みの日ならよくお屋敷にそのままお誘いしたりする。

 ユーリにお願いをしないとダメだけれど、大体ユーリはいいよって言ってくれる。

 ユーリはアイラのだんな様で、私のだんな様でもあるので、私やアイラが間違ったことを言わない限りはだいたいやりたい様にさせてくれる。

 今日は週末じゃないから適当なところで話はキリをつけて帰る。


 お屋敷に帰り着くと、大体はお風呂に入ってからお夕飯を食べる。

 お風呂に入る前にアニスやピオニーを抱っこしたり、二人がまだ元気そうならちょっと遊んで汗をかかせてからお風呂に入ったりすることもある。

 アニスはちょっとなまいきなこともあるけど、二人ともすっごくかわいいし大事な妹、お姉ちゃんがお嫁に行っちゃったから、私がちゃんとお姉ちゃんをやらないといけない。

 お姉ちゃんみたいにおっぱいはないけれど、抱っこしたり、お風呂入れたり、ご飯のお手伝いだってお手の物。

 偶には添い寝だってしてあげる。



「アーニス、今日はアイリスおねえちゃんが添い寝したげるねー!」

 アニスは先日の戦争で、メイドのマリーさんが亡くなるのを間近で見ていたらしいので、きっと動揺している。

 私も少し混乱していたけれど、もう大丈夫だから、今度はおねえちゃんとして私がアニスを支えるのだ。


「アイリスちゃんまたなの?一昨日も一緒に寝てあげたのに、まだ暑いからアニスは一人で寝たいなっておもうの・・・でもアニスちゃんがおねえちゃんぶりたがってるのに断ったらかわいそうだししかたないね。」

 とアニスはやっぱり生意気なことを言うけれど、ベッドの上に抱っこする用のぬいぐるみが3つも転がってる時点で強がりだよね?

 アニスはぬいぐるみをベッドの隣のイスの上に移動させるとポンポンと自分の隣をたたく。

 私はそこに枕を置いて生意気な妹の頭をワシワシとなでるのだ。


「あー!もう!今から寝るのにグシャグシャしないでー!」

 アニスが私のわき腹をつついて反撃してくる。

「あ、ソコはだめだよ、ずるいよ!」

 私も負けじと、アニスの脇の下に手を入れてこちょぐりかえす。

「キャハハハ、くす!ぐったい!」

 今度は胸の辺りにアニスがパンチをしてくる、しかもグーで。

「あぁやったなー!おねえちゃんの本気が見たいの?」

 こうなったら容赦なんてするもんか、私はアニスの手首をつかむとベッドの上に押し倒す。

 そのまま、アニスのお腹を跨ぐ様にしてひざ立ちで上に乗っかる。

 この後どうしよう・・・、アニスがばたつかせてる足は私の背中には届かないけれど、私はアニスの手首をつかんでいるので手も自由にはならない。

 これを離したらさすがに反撃してくるよね?

 あぁそうだ・・・。

「アニスゥ~」

 ニコニコと笑顔を浮かべてアニスの顔を覗き込むと、アニスはベーっと舌を出す。

 いつもならかわいいかわいいってなるけれど、今はちょっと私も気が立ってるのでなんていうか、イジメたい気持ちがムクムクと湧き上がってくる。

 私はアニスの首筋に口を寄せると、尖らせた口からそっと息を吐いた。


「ひにゃぁぁぁ!?ちょ・・・アイリスちゃ!ん!?」

 フーっと、首筋、耳、と長く息を吹きつける。

 さっきまでより手と足が暴れるけれど、振りほどかれない様にする。

「おねえちゃんって呼んだら止めたげる!」

 いいながら今度はまた首筋に戻り、胸元、脇と息を吹きつける場所を変えてみる。

 身を捩りながら暴れるアニスの胸元に今度は口をつけて、思いっきり息を吐くと、ブブブブブと音が出る。

「やーめ!やめてぇ!アイリスちゃん!やぁだぁ!!」

 あれ?ちょっと涙目になっちゃった?

 おかしいなぁ、ピオニーは大喜びだし、ちょっと前までならアニスも大喜びだったのに・・・。

 やりすぎたかな・・?


 そう思って手首を離すと・・・

「リャァァァ!」

 さっきのは泣きまねだったのか、アニスは自由になった手をすぐさま私の両脇に直撃させ、思いっきりこちょぐる。

「きゃぅ!ちょっ・・アニスそれズルイ!!」

 私はバランスを崩して、抑えていたアニスを自由の身にしてしまった。

 ソコから先はちょっと覚えていない・・・ただ気がついたときには私もアニスも汗ぐっしょりで、ヘトヘトで、お母さんにガミガミとしかられていた。

 それからちょうどお風呂に入ろうとしていたソニアちゃんとソルと一緒にもう一度お風呂に入ることになった。


 汗を洗い落としてすっきりしたころにはなんと夜10時・・・こんな時間まで起きてるのなんてお誕生日の夜くらいだよ!?

 道理で眠いわけだ・・・と笑いあって、もうケンカとかじゃれあいとかをするどころでもなくなって、私とアニスは仲良く並んで横になった。

 そうしたらお母さんがベアトリカを部屋に連れてきて

「二人がケンカを始めたら呼びに来て」

 とお願いすると、ベアトリカは「わっふ」とその外見からは想像できないくらいかわいい声で鳴いて返事した。

 アイラが連れてきたこのクマもすっかり家族の一員だね・・・。

 部屋の中にいると大きくて目立つし、ちょっと気になるけれど。

 おとなしいし賢いしフカフカだしと今までペットを飼ってなかった我が家でも安心してお世話できそうな子だ。


 お母さんが明かりを消して出て行った後、ベッドの横にうつぶせになっているベアトリカに手を伸ばしてその耳を触る。

 ベアトリカは一度耳をピクつかせたものの抵抗もせずなすがままになでられてくれる。

 その毛は最初少しごわごわしていたけれど、毎日お風呂に入る様になった今ではモフモフしていてぬいぐるみみたいに柔らかい。

「おやすみーベア、アニスもお休み、ンチュー、んー」

 二人におやすみの挨拶をして、アニスのおでこにチューしたあと、そのまま目を瞑ってみる。


「ガフガフ」

「おやすみー、もーしょーがないな・・・」

 と1人と1匹の返事が聞こえて私にチューされたアニスも少し考えてから私のほっぺにチューし返してくれた。

 そしてそのまま私の胸元にほほを寄せて寝息を立て始める。

 やっぱり私の妹かわいい!


 でも抱きしめたら暑がるだろうから、そのままで私も寝ることにした。


 今日も一日何が楽しかったのかわからないくらい楽しくて、幸せだった。

 明日もこんな風に何事もない楽しい一日が続きます様に・・・

遅くなってしまいました。

アイリスは子どもなので、割と自分勝手ですが、心根は優しい子です。

前周と比べると、男性への苦手意識がほとんどなく

家族を失うことへの恐怖心が薄いですが、逆にそのことを想像してしまったときに弱いです。


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