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D・ブレイク ~運命が変わる時~  作者: アイq
4章 天上の楽園
23/34

二度目

11/11 亡霊と泥棒猫でモトナフの登場以降を修正しました。

今回の話に直接影響してます。

今後も必要に応じて適宜修正する可能性があります、すみません。

「地下の次は山登りか」


 二人の前に聳え(そび)立つのは複数の峰が連なった岩山だった。麓付近は緑豊かに様々な植物が生えているが、中腹より上は丸裸だ。さらに天辺は雲に隠れておりここから山頂は確認できない。


「有識者(いわ)く登山中級者向けの山だそうだ。登山は趣味か?」


「そんな風に見えてるのか?」


「まあ安心しろ、あくまでゲームだからな。この地形のお陰で三合目付近からは敵も出てこねし、現実みたいな理不尽もない。俺のガイドに沿ってついてくればいい」


「何言っても進むしかねえよな」


 二人は森の中へ足を踏み入れた。雰囲気は始まりの森に近いが出てくるモンスターのレベルは上がっている。しかしここまでの苦難を乗り越えてきたクロイツの敵でない。


 足元が柔らかい土から硬い岩へと変わっていく。最初は余裕を見せていたクロイツだったが、次第に傾斜と足場の悪さにペースが落ちていく。一方のモトナフはどこまで行っても変わらず、クロイツを待ちながら先へ進んでいく。


「大丈夫か? ここまで来たら休憩しよう」


 クロイツが顔を上げると、モトナフは少し平坦な場所からこちらに呼びかけていた。しかしモトナフと視線はあわず、遥か後ろに向けられていることに違和感を覚える。クロイツは遅れてモトナフのいる場所へたどり着いた。太陽は一番高い所を少し過ぎたくらいだった。


「半分くらい来たし、ペースもいい感じだ。見てみろあれが俺たちの最終目的地だ」


 モトナフが指さした先には巨大な城が鎮座していた。雰囲気は物々しいが来るもの拒まずというように門扉は広く開け放たれている。


「随分でかい城だな。でもここからなら大して時間をかけずに行けそうだ」


 ふと視界の隅で何かがなびいた。それは一瞬のことだったが通ってきた道には岩以外のものはなかったはずだ。


「もう少しだ、夕暮れまでにあそこまで登っておきたい。そしたら朝、頂上まで一気に登れる」


「……わかった、ならそろそろ行こう」


 クロイツは腰を上げた。再びモトナフ先導の下で岩場を登っていく。傾斜はより急になり足場も悪い。また高度が上がるに連れ気温は下がっていく。麓で集めた小枝で焚火をしながら小休憩を取る。やはりモトナフはしきりに後ろを気にしている様子だ。


 日が傾き始めた頃、山頂付近の洞穴ほらあなへ辿り着いた。中は広くアバターを置いていても問題ない。いつの間にか雲のできる高さまで来ていたようで、辺りは霞がかり周りの状況はよく把握できない。


「いいペースで来れたな。とりあえず今日の目標は達成だ。次は明日八時、山頂まで一気に登ったらボス戦だ。気付かないだろうが結構体力使ったからな、ゆっくり休んで明日に備えろ」


「そうだな、今日はよく眠れそうだ」


 クロイツはログアウトの操作をした。空中を二、三度叩いた右手が力なく垂れる。それを確認したモトナフもこの世界から姿を消した。



 二人が山頂付近の洞穴に入ってから五分。霧の中でもぎりぎり見失わない距離にいた一つの影が動き始める。岩を盾にしながら穴へ近づいていく。人の気配がないのを感じると穴の中へ足を踏み入れた。そしてゆっくりクロイツの鞄へ手を伸ばす。


「やっぱりね」


 突然響いた声に影は飛び上がった。反射的に腰の短剣に手をかけ、振り返ったナルディの顔が夕日に照らされる。そこにはモトナフの姿があった。


「なぜわかった」


 ナルディは警戒体勢を崩さず硬い声で問いかけた。


「こいつが襲われてねえからだ。槍の持ち主を隠し続けたのは自分が奪い易くするためだろ。最後のダンジョンで奪えば手間も省けるしな」


「なら……私がどうするかもわかってるだろ」


「そこに探し物はねえよ」


 ナルディが地面を蹴るのと同時にモトナフは宣言する。ピタリと動きが止まった。


「どういう意味だ?」


「そのまんま。持ち歩いてると他の奴に狙われるから隠しておくように言ったんだ」


「それを信じろと?」


「まあ信じるかどうかは自由だが、鞄には警報装置もかけられてる。せっかく明日の八時まで時間があるんだ。俺の話聞いてからでも遅くねえんじゃねえかな」


「お前の話?」


「ああ、ちょっと協力したい相手が変わってよ。俺と手を組まないか? 俺の目的はエンディングをみることで、イベントの度に協力者を探してんだ。あの時は面白そうな奴だったからこいつについてきたんだが、変わったことばっかりで不安になってきてよ。どっかで乗り換えようと思い始めてたんだ」


「それで私に……随分都合がいいな」


「まあ正直誰でもいいけど、終盤まで残ってるってことはお前もそれなりに実力者だろ。それに槍のことも俺のことも嘘じゃないのは知ってるし。もう二つの素材は揃ってるから残りはここだけだ。今日中に討伐できればそのまま隠し場所へ案内する。悪い話じゃないだろ」


「……わかった、案内しろ」


 ナルディはしばらく考えた後、提案を受け入れた。モトナフは満足そうに笑みを浮かべ、二人は連れたって洞穴の外へ向かった。


「お前詐欺師の方が向いてるよ」


 驚き振り返るとそこには欠伸しながら頭を掻いているクロイツの姿があった。


「おい、せっかくのチャンスだったのに!」


「悪いな、でも気付いちゃったから……それで、随分必死なんだな。そこまでして手に入れる名誉に何か意味があるのか?」


「お前に何がわかる。私たちの苦労も知らないで」


「何もわかってないのはお互い様だろ。なら少し付き合えよ」


 いつの間にか陽は暮れ辺りは闇と寒さに包まれていた。クロイツは枝を組み上げ焚火をたく。洞穴は暖かい光に照らされた。


tips


 復活の秘薬:使用すると一度だけ死から逃れられる。所持者が死亡した場合、自動発動。


 強化の秘薬:使用後30分間様々な強化効果(バフ)を受けられる。

ありがとうございました。次回は未定です。

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