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D・ブレイク ~運命が変わる時~  作者: アイq
2章 荒廃都市ニーク
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終末の支配者――攻略編――

 クォールはらせん状に巻きつきながら柱を登っていく。その隙にMP回復薬を使い再び広範囲の炎魔法を唱えた。しかし柱は狭く思ったような効果は得られない。それどころか体が燃え盛ったままクロイツに飛び掛かってくる。


 反射的に回避し剣構える。距離を詰め体当たりや薙ぎ払いの猛攻の猛攻が続く。剣や体術で攻撃を防ぐも、相手に隙がなくじりじりと押され気味になっていく。


 背後に柱の気配が近づき一瞬そちらに気が逸れた。クォールは大きく振りかぶると牙を突き立てた。すんでのところでクロイツは横に避け、直撃を免れる。牙はそのまま柱の根本に突き刺さった。


 柱に大きな穴が開き崩れ落ちる。クォールとクロイツを分断するように倒れ、地響きが起こる。砂埃が視界を奪いクロイツは衝撃で剣を取り落とす。


 クロイツは剣の残像を追い手探りで辺りを探す。その時奇妙な感触が手に触れた。それはビニールのようで引っ張り上げて近くで見ると、現実世界の電気配線で用いられる電気コードだった。


 よく見ると周りにも似たようなコードの束が複数あり一方は柱の中の空洞、もう一方は地下へと繋がっていた。この雰囲気に似つかわしくないオブジェクトにクロイツは困惑していた。砂埃の収まってきたクロイツの視界にもう一つ意味を成していない石像が映った。


 剣を拾い最後のMP回復薬を使うと杖を装備する。クォールは先の混乱から逃れようと柱の上へ陣取っていた。そしてクロイツの姿を捉えると尾の先を震わせ威嚇する。


 クロイツは杖を構えると素早くイメージを固め詠唱した。杖の先からバリバリと空気を割るような音が響くと、稲妻がクォールへと向かっていく。電気系の魔法であることを感じたクォールは避けることもなく寧ろ余すことなく吸収した。


「何やってる! 避けられないような雷撃がくるぞ!」


「まあ見とけって」


 体表面を雷の波が寄せ返し、それに呼応するように鱗が逆立つ。クロイツの放った魔法は得意属性でない武器を使ったことや、イメージが雑だったことこともあり人に当たっても軽く痺れる程度のものだった。しかし今やそれは増幅され雷雲にも匹敵している。


 全身が電気の被膜に覆われようかとした次の瞬間、輝きが消え元の金属蛇に戻った。静寂が訪れる。クォールは雷撃がキャンセルされ一瞬あっけに取られていたが、棒立ちのままのクロイツに飛び掛かる。


 失意の中に居たクロイツは回避が遅れ噛みつかれる。体が麻痺し地面に倒れこむ。全身が重く天井を見上げるクロイツにクォールが覆い被さる。


 ――今回もだめだったか。


 モトナフが諦めかけたその時、クォールの横っ腹を強烈な熱源が襲い体は宙を舞った。



『起動シークエンス……完了』


『警戒モード……排除対象A-003確認、保護対象確認……緊急保護シークエンス、開始』


『照準、確認……2,1』



 クロイツの手足に感覚が戻ってくる。石像の方を見ると右手に握られた筒が真っ赤に彩られていた。手に持った筒を捨てると豪快な音を立てて走り抜け、真っ直ぐクォールの元へ近寄る。


 臨戦態勢だったクォールの頭へ右ストレート。牙が一本へし折れた。倒れこんだ体を持ち上げ、頭と尾を掴むと()()に当てて力をかける。ギリギリと悲鳴をあげた体は限界に至り真っ二つに割れた。


 それと同時にクォールのHP表示も0になり動かなくなった。石像は辺りを見渡すとクロイツたちの乗ってきたエレベーターに乗り込むと姿を消した。


『戦闘終了』


 地下空間ではただ二人の息遣いが響くだけだった。


「終わった……のか?」


 クロイツが問いかける。


「知らん、俺の方が訊きたい。あいつはなんだ?」


 クロイツは立ち上がりログを確認しながらクォールの元へ近づく。


「ただの推測にしか過ぎないんだが――」


 以前ここには文明があったこと、電気が利用されアンドロイド技術が発展していたこと、柱の中に電気コードが詰められていたこと、意味のない石像が立っていることを説明した。


「だからあの柱が本当はバッテリーの役割をしていたんじゃないかと思ったんだ。もちろん地下に続くコードが石像に続いている保障もなかったが、あのカマキリとの戦闘を思い出すとどうも意味のないオブジェクトはないように感じて。雷の魔法に適正がなかったからこいつに増幅してもらったのさ。石像が戦闘の手助けになるとは思ったがまさかあんな強力だったとは……」


「全くひやひやさせやがって」


 クロイツは無事、戦利品を回収し終える。その中には目的の赦しの十字架も含まれていた。


「まあ何はともあれ目標達成だ。それを光龍槍に吸収させておけ」


 クロイツはバッグから光龍槍を取り出すと二つを近づけた。すると十字架は光る球体に姿を変え、槍の中へ消えていく。ゆっくり光は広がり全体を包み込むと光は収まった。


「順調だな、次は洞窟だ。しっかり休んで備えておけよ」


 それだけ言い残すとモトナフは消え、クロイツも力の証を使うと荒廃都市を後にした。



「続いてのニュースです。オンラインゲーム、『セカンド・アース』を巡り自殺未遂が発生し意識不明の重体です。現在警察は遺書を基に悪質な投稿が原因ではないかと捜査を進めています。このゲームは以前にも死亡者が出ていました」


 このニュースが流れてからクロイツはゲームにログインすることはなかった。



tips:

荒廃都市ニーク:異星からの来訪者に最後まで抵抗し滅ぼされた最後の文明都市。当時の高度な科学技術が至る所で見受けられる。

ありがとうございました。

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