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D・ブレイク ~運命が変わる時~  作者: アイq
2章 荒廃都市ニーク
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終末の支配者

 そこは二十メートル四方程度の広さだった。周りは申し訳程度の柵で囲われており、壁はなく景色は金属のつなぎ目とナットが上へ流れていくだけの殺風景なものだった。


「それじゃあここのボス、クォールについて話しておこう。まず見た目は巨大な金属でできた蛇で防御力が高い。火属性の武器か魔法で攻撃するのが有効だ。相手の攻撃は電気を操れるみたいで噛まれると麻痺して動けなくなるから気をつけろ。だから雷系も禁止だ、奴の体で増幅されたのが返ってくるからな」


「色々わかってることが多いな」


「そりゃそうさ、何回行われてると思ってる? それに世界中のゲーマーが集まって攻略してるんだからな。少し探せば簡単さ。もちろんあのカマキリだってあったが聞かないで飛び出したのは誰だ?」


 クロイツは肩をすくめた。


「まあ勝ったんだからいいだろ? それに自分で攻略法を見つけんのも悪くないと思うぜ」


「そりゃ、普通のゲームだったらそうだろう。でもこれは一瞬ですべてが台無しになる可能性があるんだからな、慎重になりすぎることはない。なんか気になることあるか?」


 クロイツは少し考えると先のボス戦を思い出した。


「そういえばあのカマキリみたいに段階的に姿が変わったりはしないのか?」


「あれは『変態』っていう現象だ。滅多にあるもんじゃないから事故にでもあったと思ってくれればいい。ただそこまで重要な訳じゃないんだが、相手の体力が半分を切ると新しい技を使ってくる。フィールドにある柱に登って上から飛び掛かってくるから回避のタイミングに気をつけろよ」


 そんな話をしていると辺りは金属の舗装がされていない岩肌に変わり、続いて巨大な空間が現れた。円形状に掘削されたのか壁にはドリルの跡がついており、全体的に歪な形になっていた。部屋の中央には先ほど会話に出てきた柱が四本立っていた。そして反対側には天上まである石像が鎮座していた。寸胴鍋に手足が生えたようなフォルムで右手には棒を携えている。


「じゃあ準備ができたらエレベーターを降りろ。健闘を祈る」


 そういうとモトナフは一足先にエレベーターを降り全体を見渡せる位置に陣取った。クロイツは一つ深呼吸をするとフィールドへと降りた。


 どこからか黒板をひっかいたような不快な音が聞こえてくるとクロイツは火属性の格闘武器、ファイアグローブを装備した。段々大きくなるにつれ音の方向がわかった。上だ。見上げると巨大な穴から暗闇がこちらを覗いていた。


『荒廃都市ニークボス、クォールとの戦闘を開始します』


 通知が流れた瞬間、クォールが穴から飛び出した。それと同時にクロイツも素早く後ろへ避ける。地震のような揺れで天井からパラパラと小石が落ちてきた。


 全長は十五メートル程で、口からは巨大な二本の牙がむき出しになっている。鱗は金属になっており、ちぎり絵のように様々な色を寄せ集めてできたようだった。


 体をよじらせると金属同士が擦れあい、あの不快な音が響く。クォールはとぐろ巻き鎌首をもたげるとシーと威嚇しながらクロイツと対峙した。クロイツが背後を取ろうと位置を変えるとそれに合わせて向きを変えた。


 尾の先端が激しく震えるとクロイツをめがけて打撃を繰り出した。それはクロイツのすぐ横へ叩き込まれる。絶えず動き回っていれば当たることはなさそうだ。しかし相手の隙も少なく瞬時に反応しても二、三回の攻撃が限度だと思われる。


 クロイツが距離を詰めるとクォールは大口を開けて襲い掛かってくる。素早く後ろに引き回避した。リスクを考えると時間はかかるが尾を狙い攻撃するのが確実だろう。


 攻撃パターンは一定で注意深く動いていれば当たることはない。四分の一程削るとクォールは雄たけびを上げた。警戒しながら距離を取るとクォールは体を伸ばし、うねらせながら突進する。


 ピンボールのように柱や壁に当たることで不規則に這いずり回る。近づきすぎると体当たりのように弾き飛ばされ、近距離武器では歯が立たなかった。クロイツは杖を装備すると火の玉を飛ばす。頭を狙っても動きが速くなかなか思ったようにはいかなかった。


 ――小さすぎてエイムが合わないなら。


 クロイツは一つの火の玉が着弾と同時に分裂し燃え盛る火柱でできた壁をイメージする。それをクォールの眼前に放ると火に包まれた。叫びを上げながら体を仰け反らせる。


 火の勢いが収まると赤々と熱せられた表面が露わになる。大ダメージと引き換えにMPをほぼ使い切ったクロイツは剣を装備すると駆け寄った。


 体勢を立て直したクォールは牙で応戦する。素早く合わせたクロイツだったが死角から突き出された尾が体を薙ぎ払い、軽く吹き飛ばされた。


 好機と捉えたクォールは再びクロイツに噛みついた。痛みにふらつきながらも直撃は防いだが、牙の表面を帯電させており行動を阻害される。続けて尾で締め上げるとそのまま放りだされる。


 連携が決まりHPは大きく削られていた。剣を頼りに立ち上がると回復する暇もなく、再び部屋の中央で対峙した。



tips

クォール:荒廃した都市に巣食う巨大な蛇。大量のアンドロイドを取り込み体を機械化させた。

ありがとうございました。

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