プロローグ
21年9月全体的に書き直します。
霧の立ち込める森に朝を告げる日の光が差し込んだ。水の粒子により和らげられた光と、木の影が生み出すコントラストが美しく、先ほどまでの不気味な雰囲気は一変した。
そこに一人の男がいた。木に背中を預け膝を抱え込むように小さくなっている。寝ていないのか目は血走り、ぼーっと一点を見つめている。葉が擦れる音がする度、そちらに警戒の目線を送り傍らに置かれている錆びだらけの剣に手をかける。物音が遠ざかると再び同じ姿勢に戻った。
小さく狼の遠吠えが聞こえた。距離はある。安堵したのも束の間、今度は近くでそれに応える個体がいた。肩を跳ね上がらせ更に小さく縮こまるが、耳をつんざくような咆哮に思わず固く耳を塞ぐ。
限界だった。なぜ自分がこんな目に遭わなければいけないのか。半ば自棄になり剣を構えながら立ち上がると声のした方へ向き直る。
「来るなら来い。俺はこんなとこで負けるわけにはいかないんだ」
その声は頼りなかった。それでも自らを鼓舞する役割は果たせたようで目に迷いはない。
「来ないのか? なら……俺が行ってやる!」
吹っ切れたように叫ぶと駆け寄だした。すると空間から一つの白いポリゴンが出現し分裂しながら増えるとあっという間に半円状のドームが形成され、男はその中に捕らわれた。同時にその視界の上部に緑色のバーが二本現れる。
一つには『クロイツ(Lv15)』、もう一つには『スライム(Lv2)』と表示されていた。
ありがとうございました。
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