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「キャーッ、明飛くんカッコイイー!」
「陸上部のエースだもんねっ。」
「次、明飛くんと天夏様が走るんだって!」
「本当!?見に行こっ。」
冬来「…あ。(次、天夏が走るんだ。)」
浩一「位置について、ヨーイ…。」
パンッ
「キャーッ二人共カッコイイー!」
「めっちゃ速ーい!」
明飛「…っはぁ。」
天夏「………。」
「キャーッ、さすが天夏様っ!」
「あの明飛くんに勝てるなんて、天夏様くらいよねっ。」
冬来「…わぁ。(天夏かっこいいっ。)」
天夏「冬来~、見ててくれた?」
冬来「うんっ!え、と、すっごくかっこよかった、よ?///」
天夏「本当っ?真面目に走ったかいがあったよ~。ねぇ冬来、ごほうび頂戴?」
冬来「も~ちゃんと毎回真面目に走らなきゃだめだよ~。」
そう言いながら、ぼくは天夏の頭をなでなでした。
天夏「ん~~っ、冬来大好きっ!」
冬来「えへへっ、ぼくもだよ。」
* * *
冬来「どうしてっ!?どうして急に一緒に帰れないなんて言うの!?」
それは長い今日という日の学校を終えた放課後のことだった。
天夏「ごめんって、どうしても出なきゃいけない会談があって。
一ヶ月は一緒に帰れそうにないんだ。」
冬来「一月もっ!?」
天夏「うん。」
冬来「…分かったよ。じゃあ1人で帰るよっ。」
天夏「あ、待って!」
後ろで天夏が何か言った気がしたけど、気にせずその場を走り去った。
* * *
とぼとぼ
冬来「…はぁ。(今日、ぼくの誕生日なのにな…。)」
会談が仕方がないことなのは分かってる。
でも、どうしても今日だけは一緒にいたかった。
冬来「はぁぁー…。」
そうぼくが深いため息をつき、少しうるんでしまった眼をこすり、顔を上げた時。
感じたことのない不思議な風をうけた。
冬来「…?」
ぼくは、なんとなくその場で足を止めてしまっていた。
そして、ふと見上げたそこには…
冬来「なんだろう…これ?」
これが、ぼくの人生を変えることの始まりになることをぼくはまだ知らなかった―…。