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《妖怪》
それは―…
強く、
聡明で、
美しいもの。
――そして、
リリ…ン
リリリ…ン
ジリリリリリンッ
ジリリ…
??「ふわぁ!!」
ぼくは自分でセットしたはずの置時計のけたましい音に跳ね起きた。
慌てて時計を確認し、使い古ししおれきったかけぶとんを放り投げ、準備に取りかかる。
ネクタイを締め、髪をくくり、かばんを手に取り家を出ようとした時、
バサッ
??「…!」
ぼくはその音を聞くなり、かばんを取ったひょうしに倒れたソレをとっさに拾い上げ、抱きしめる。
―そう、妖怪は、
何よりも大切なものです。
―それに比べ人間は…
明飛「や~い、よ~か~い!」
バッシャーンッッ
??「…っ。」
脆く、
バケツにつがれた大量の水が乱雑に浴びせられる。
「アハハハハハハハッ。」
愚鈍で、
多数の品のない笑い声が浴びせられる。
修二「だっせー!」
博紀「お似合いだな。」
翔「ぞうきんでも貸してやろーか?」
英燐「翔~、可哀想だよー。」
醜いもの。
??「…。」
明飛「こんなとこで本なんて読んでないで、さっさとおうちに帰れよー。
お前ってほんとさぁ…
瞬助「何やってんだよ、明飛ー!早く部活行くぞ~。」
明飛「ん?あぁ、今いくー!
じゃあ、また明日遊ぼうな!」
??「……。」
そう言って、ぼくに手を振り、彼らはその場から立ち去った。
??「…はぁ~。良かった、濡れなくて。」
ぼくは、とっさに抱きかかえかばったその本を見て、安堵の息をつく。
??「(ここなら誰も来ないと思ったのにな…。)」
そう思いつつ、冬も近づいた誰も使うことのないプールを見わたした。