第三話 勢力図 前篇
ボコられた兼田の前に現れた最上。後に続く奇妙な二人の関係はここから始まる。
僕が日記をもし書くならば、今日一日の内容はかなりの枚数を消費することだろう。
かつあげされ、ビビっていた相手に助けられ友達になり、帰りで今度は逆に助ける羽目になるなんて・・・。
最上は今日あったことを思い出しながら就寝する。
話は兼田が倒れる前。
今から遡ること数時間前。
舞台は隆上高校。放課後16時53分。
やっと初日の授業が終わった。しっかし放課後ってのは暇なもんだ。これから一日が始まるって感じなのに家に直で帰るのもな~。
初日の授業が終わりすることもなく兼田は帰る準備をする。
帰ってもすることがない兼田はすぐに帰ることもせずダラダラと教室で過ごしていた。
先ほどまでいた隣の席のやつは気がついたら教室にはいなかった。
おそらく先に帰ったのだろうと兼田は思った。
よし、初寄り道でもするか。
学校探検は済ましたが、この町のことはまだまだ分からんしな。
兼田は入学式前にこの町に引っ越しをしていたが、今まで新生活の準備をしていた。
そのためこの町のことなどほとんど知らないのであった。
しっかし今日は無駄にいい天気だな。
サッカーやら野球や等の集団競技は昔から好きになれんが今日ならやってもいい。
空を仰ぎながら物思いにふける兼田。
彼にはこれから自分に降り懸かることなど全く知る由もなかった。
この学校での次期番長は間違いなくこの俺だ。
物陰に隠れる男はなにやらいくつかの道具を持ちながら物陰に隠れている。
その男というのは、郡山である。
郡山は兼田との昼間の決着をつけようとしていた。
校内では俺を過小評価する風潮があるが、それは大きな間違いだ。
それを証明するために兼田には犠牲になってもらうとするか。
相手は丸腰こっちは布袋に釘バットとアイスピックにフライパン・・・とまぁ、要らん物も持ってきてしまったがこれだけあれば勝てる。
郡山は経過などどうでもよかった。彼が望む者は結果だけだった。
来た来た。暢気に空を仰いでいやがるぜ。
「クク・・・だめだ笑いが」
郡山が動く。
郡山は布袋で兼田の視界を遮る。
その後釘バットで兼田の横腹を殴ろうとする郡山だが、すかさず兼田も殴り返してくる。
想定外の反撃に慌てた郡山は左手のフライパンで防ぐ。
フライパンが一撃で変形する。
郡山はフライパンで兼田の腕を振り払い右の釘バットを振りおろす。
これも兼田はフライパンで右腕を払われた反動を利用し右に飛ぶ。
よくかわすよ。だがもう足腰は限界だろう?
いや、もう体中が限界のはずだぜ。
ほれっ、対応してみせろよ。
郡山は兼田の足下に先ほどつぶれたフライパンを投げる。
何も見えない兼田は先ほどの釘バットを警戒して頭部を守る。
郡山は倒れる兼田の頭部めがけてバットを投げる。
兼田はバットを腕で防ぐ。
そのため腕での守りが頭部に集中した。
郡山の跳び蹴りが兼田の右胸に当たり、着地時に郡山の全体中が兼田の右肋骨に集中した。
「君に対する攻撃がいくつか決まる中腹部にだけ攻撃が当たらないことが気になりました」
右の肋骨が折れ悶える兼田を見下しながら郡山話は話し出す。
「しかも腹部への攻撃を避けるためにだいぶ無理な動きをしていましたね」
右胸を抱えている兼田の左太股を踵でグリグリと踏む郡山。
「つまらねぇな。もう叫ぶこともできんか?」
にらむ兼田。しかしそれは逆に郡山を喜ばせる。
「そうか、踏み方が悪かったんだなぁ」
ふっふっふと笑いながら兼田を痛めつける郡山。
暫くたって郡山も飽きたのか兼田に背を向けて帰り始める。
「久々に一般人相手に楽しめたぜ」
郡山はそう言い放ち高笑いをしながら帰っていった。
チカラだけが強さではない。