表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
black blood's  作者: 桃幻 景
3/9

第二話    出逢い     中編

 兼田が暴れます

 「あの。っすすんませんでした」

 ここは一応謝るしかねぇよな。こんなとこに連れてこられて・・・。大体どこだよここは?3棟か?

 「君も分かってるでしょうが叫んだって無駄ですよ。ここはもうほとんど使ってない校舎ですから」

 「そうそう、部活動で使う程度のこの校舎じゃ叫んだって誰もいないし、構造的にもここからじゃ外に音は漏れねぇ」

 リーダー格の男と近くにいる先輩が口々に言ってくる。

 脅しではあるがハッタリではない。

 現に彼らが発した言葉は近くの校舎に小さく反響している。

 ぁあ、昼飯なしどころか当分の昼飯代が・・・トホホ。

 社会勉強させてもらったと考えるべきか? 


 最上が覚悟を決めていた最中思わぬ乱入者がこの場に近づこうとしていた。


 「面白そうなことしてんじゃねぇか。俺も混ぜてくれよ」

 ん?一同の視線が一点に集まる。兼田だ。

 「誰です?」リーダー格の男が他の者に聞く。

 「兼田っすよ」一人がそう言うとリーダー格は納得した様子で「煙堂を倒したた人ですね」と呟く。

 「初日に煙堂とやっただけあって血の気が多いんですね」

 「お前煙堂のこと知ってんのか?」

 リーダー格は少し呆れたように「ええ」と返す。

 「煙堂は基本的に雑魚しか相手にしない主義です。君みたいなのとは基本的には絡まないはずなんですよ」

 リーダー格は小さく仲間達に合図を送る。先ほどまで群れていただけの先輩達は今では兼田を一定の間合いを取りながら包囲している。

 「なあ、兼田。お前どうやって煙堂に喧嘩ふっかけた?」

 少し笑みを浮かべたリーダー格の発言を合図に他の仲間達が攻撃を仕掛ける。

 先ずは左右から攻撃がはじまる。

 右側頭部への殴打。左ふくらはぎへの蹴りが同時にくる。

 兼田は軽く飛び蹴りを回避し右腕で殴打を防ぐ。

 後ろから背中への跳び蹴りが決まり、最後に一人が兼田の頭を蹴り上げて終わりかと思えた。

 しかしそうはならなかった。蹴られるすんでのところで兼田は後ろに身を引き、片足立ちになっている相手のがら空きの腹に強い一撃を食らわす。

 「ほう。一応この程度は対応できるか」

 リーダー格は薄ら笑いを浮かべながら兼田に向かって余裕たっぷりにいう。

 「ふん。てめぇらぺらっぺらなんだよ」

 兼田は首を鳴らしながら言う。まるで準備運動をしているかのように。

 兼田に殴られた一人は気絶したのか動く気配がない。




 兼田か・・・噂通りの危険な奴ですね。

 さて、どうするか。まだ1人減ったところでアイツ等が戦えないとも思えないが、これからいくら続けてもヤツには効かんだろう。 煙堂が何発打ってもびくともしなかったって云う話もある。

 煙堂の一発一発は大したことはないが腹部に集中する連続の殴打は闘う者に地獄を見せる。

 そんなあいつが殴り疲れるまでやって倒れなかったんだからアイツ等ではいくらやっても兼田は倒せん。

 「うらぁ!」

 先ほどとは打って変わって一方的に兼田が1人ずつ倒していく。

 「んん?テメェ、なにがおかしい」

 「ん?」

 「ん?じゃねぇよさっきからこっち見て気持ち悪い笑い方をしやがって。仲間がやられてんのになに考えてんだ?」

 そうか、私は笑っていたのか。しかし・・・フフフ。しかたないですねぇ、これだけ見ていれば嫌でも分かってしまいます。






 「そんなに私の顔が見たくないならそろそろ終わりしてあげますよ・・・」

 リーダー格は左手で前髪を上げながらそう言い、少しずつ兼田のほうに近づく。

 ヤバいあの人だけなにか勘着いている。

 他四人はもう殆どマトモに動ける状態じゃない。今なら逃げられる。

 「兼田!」







 「ん?」

 校舎内で迷って外を見たらアレどう見てもかつあげだよな。

 うっしゃ!最高だ。五人も居りゃ暴れられる。

 しっかし、昨日といい今日といいここの奴らもつまんないことしよるよな。しかも今日は五人対一人だ。

 んーでもどういけばあそこまで最短で行けるんだ?

 まぁいいや、窓から飛び降りりゃここが最短だ。

 「とうっ」

 やはり目標までかなり近付いた。

 だが、話に夢中でこちらには気づいていない。

 「おもしろそうなことしてんじゃねぇか」 さーて、バトルの始まりだぁ。


 痛ってぇなモウ!始まっていきなり背中に跳び蹴りすんなよ。ビックリしたじゃねぇか。

 しっかし今のは危なかった。さっき頭を蹴られてたら、そっからはもうただの集団リンチだ。

 あんまりムカっと来たんでついうっかり本気で殴っちまったじゃねぇか。

 まさか二日続けて本気出させるとはこの町はヤベェな。

 しかしコイツ等・・・メンドクせぇ。

 全然集中できねぇ。昨日のヤツとはまた違う面倒臭さだ。

 一人に対応しようとすると他の奴らが後ろとかから丁度悪いタイミングで攻撃してくる。

 これじゃ切りが無い。イライラする・・・。

 そういや、もう一人居たよな。

 アイツ何してんだ?



 兼田がまだ動きを見せていない一人を見ると、兼田はゾッとした。

 今まで見たことのない嫌な笑いかただった。







 「兼田!」

 かつあげされてる奴が俺を呼び捨てにした。

 「いきなり呼び捨てかよ・・・」

 ちょっとイラっとする。

 ・・・ん?まてよ、俺はあいつの前で名乗ったか?なぜ俺の名前を?

 「逃げるぞ」

 かつあげ君は俺の手を引きながらそう言う。

 まぁ、確かに闘っていて気持ちの良い相手ではなかったからいいのだが。

 「てめぇらっ。今日はこのくらいにしてやるよ。だがなぁ、次こんなみっともないことしやがったらただじゃすまさねぇからな」

 ふふっ。我ながら良い捨て台詞だ。


 敵前逃亡は自己防衛の基本です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ