Prologue
僕には知りたいことがある。
それは「sensei」というものだ。
ほんの少し前まで僕は、「chocolate」と「sensei」を同じ天秤にかけていた。
断然「chocolate」の勝ち。その中でもCote dor'(コートドール)が一番だ。
昨日、バスで隣に乗り合わせたおばあさんもそう言っていた。
彼女がベルギー出身だということも話してくれた。
だけどつい最近、
「sensei」は食べ物ではないことが分かったのだ。
人間なのは間違いない。
怪我をしたり病気になると行く病院ってところでは、白い服を着ている。
大人が集う会社というところにだっている。そこにはただの「sensei」だけじゃない。
「dai」が付く「sensei」もいる。「dai-sensei」だ。
ところがいつもそう呼ばれている訳でもないし、いつも同じ人からとも限らない。
そんなことが、余計僕を混乱させる。
学校っていうのも知っている。
ここは会社と似ていて、人間たちはそこに5日行って2日休む。
そうじゃない時もあるけど。
そこに通う人間は皆一度は口に出している言葉。
学校に行き始めたばかりの子供なんかは、夕食支度の母親に向かって「sensei」と
呼んでしまったり。うっかり、恥ずかしそうに。
でも当の本人はどうしてその言葉が出たのか分からないといった顔をする。
そんな影響を及ぼす「sensei」。
僕はこれらの様子をすべて窓辺から見て聞いて、
「sensei」というものを知りたくなったのだ。