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ドルチェ・デ・ドゥージェ! 〜王国軍第十二師団麾下製菓中隊〜  作者: 有沢楓花
第1章 思い出は宝石のように(パート・ド・フリュイ)
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3-1-3

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 その時扉がノックされ、アルベルトが戻ってきた。ティーカップが三つに、ポットが一つ。それにクリーマーと砂糖壺。

 トレイをコーヒーテーブルに置くと、三人分の紅茶を入れた。ティーストレーナーの代わりに、ポットの出口から金属の細いぼさぼさが少しと、中心の枝の部分がのぞいている。魔女の箒というやつだ。

「あ、済みません」

「どういたしまして」

 言うと彼は側の壁に体をもたせかける。どうやらこのまま話を聞いていくらしい。

「ここに軍の広報用パンフレットを用意してある。こちらに勤務規定や日程の詳細を書いた紙を挟んでおいた。

 紅茶を飲み終えたら部屋に案内し、夕食の時間に迎えに行く。それまでに資料を読んでおいてくれ。それから食堂で皆に紹介するつもりだから、簡単な挨拶も考えてくれると嬉しい」

「は、はい」

 返事はしたもののコンスタンツァは急に不安に駆られる。自分でも遅すぎやしないかと思ったが、中隊長が若い女性というので、どこか安心してしまっていたらしい。

(居並ぶ軍人さんの前で挨拶か……どうすればいいんだろう)

 ちらりと横のフィオを見れば、彼はずっと縮こまって頷いているばかりだった。

「緊張することないよ。君たちみたいな可愛らしい子がいるだけで大喜びするだろうからね」

「それはお前だけだ馬鹿者」

 紅茶を口にする。喉はからからで、すぐに胃の中に収まってしまったけれど、乾きは消えなかった。

 一気に飲んでしまってから、お代わりを断り、コンスタンツァははクラウディアのもう行けるか、との問いに頷いた。自分でもぎこちない動きだった。

 菓子職人見習いの二人は、クラウディアの案内で部屋を出た。短い道すがら彼女は基地内について軽く説明し、男子寮と女子寮それぞれにフィオとコンスタンツァを案内する。といっても女子の人数は少ないから、女子寮の方は、寮と言うよりもどこにでもある集合住宅といった趣だ。

 女子寮は三階の一角が、コンスタンツァに割り当てられた部屋だった。

「狭いだろうが我慢してくれ」

「そんなことありません!」

 コンスタンツァは本気で首を横に振る。間借りしている<インヴォケイション>の自室よりずっと広かった。

 クローゼットもあるし。トイレもお風呂も付いてるし。それに、建物自体も新しい。これは女子寮だけじゃなくて全体的にだ。

「制服一式はチェストの中に用意してある。これが鍵だ。六時になったら迎えに来るので、それまでは休んでいてくれてもいい」

 クラウディアが部屋を出て行ってから、コンスタンツァはベッドの足元に自分の鞄を置くと、側面を隣接しているビューローの天板を引き下げたり、クローゼットを覗いてみたりした。チェストの中には、言われたとおりに制服が何着か畳んであった。

 カーキや深いグリーンの似たような軍服が何種類かあったが、軍人でもない……なかった彼女には区別が付かない。そのうちの一着はなんだかボタンが二列ついていて、コックシャツのような形をしていた。

 ビューローに入っていた広報パンフレットを手にすると、仰向けにベッドに倒れる。

 クリーム色の天井にランプがぶら下がっているのをしばらくぼんやりと見ていたが、パンフレットにおぼつかない視点を合わせると、それをめくっていった。

 折りたたまれた薄いパンフレットには、フィオリシェルゴ軍へようこその文字が躍り、その下に軍服を着た猫のような何かのイラストが描かれていた。その横にショコラちゃん、と書かれているのは多分この子の名前だ。

 コンスタンツァはとりあえず目を通そうとして、難しい単語の波にゆられて、いつの間にかうとうとと眠ってしまっていた。

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