起)天国へようこそ
「……起きてください」
閉じたまぶたを通して、眩しい光が私の全身を包んでいることが感じられた。
「……早く起きてください」
優しい女性の囁きが聞こえる。まるで、小鳥のさえずり聞いているような、爽快な気分にさせてくれる。もう少しこの気分を満喫していたい……
――ボカッ!
脳に衝撃を覚えた。
「何すんだよ!痛いじゃないか」
上半身を起こし目を開くとそこには綺麗な女性が立っていた。絹織物であろうか、白く光沢のある衣服を纏い、露出している顔、細い腕と首すじの肌は、衣服にも負けない艶やかな白さだった。髪は金色、瞳はブルー、目鼻立ちはキリリッとしていて、どう見ても日本人には見えないが、その美しさに僕は見とれてしまった。
魅力的な唇が動く。
「天国へようこそ。あなたは1万1番目の来訪者です。おめでとうございます~」
「え?」
僕はあっけにとられた。そして辺りを見渡す。一面の白。まるで雲の上にいるようだった。
「……信じられない。ここは天国だと?」
「はい」
「つまり、死んでしまったんだと?」
「はい」
「そして、1万番目だと?」
「違います。1万1番目です」
「全然めでたくないじゃないかー!」
――ボカッ!
再度脳に衝撃を覚えた。
「痛たたっ……」
手で頭をさすりながら片目を開いて彼女を見上げる。彼女は微笑を浮かべた。
「痛いはずはありません。すでにあなたは死んでいるのですから……」
僕は我に返った。
「――ホントだ。痛くない」
僕は驚きのあまり両眼を大きく開き、彼女を仰ぎ見る。彼女がものすごく高貴な人に思えた。が……。
「手に持っているのなんですか?」
餅つきの杵のようなものを両手で抱えている。
「あ、これね。北欧神トールから借りている金槌。通称トールハンマーね」
「そんな、由緒正しきもので殴るなー!」
――ボカッ
今度は目の前に星がきらめいた。