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「マリアン、それぐらいにしておけ。 それ以上感謝の言葉を並べると目の前の女神は発狂するぞ」
「え!? 私としては、まだ足りない気がするのですが……」
「十分過ぎて既に一生分の謝辞を聞いた気分よ」
残念そうにマリアンが手を離すと、フィーネは安堵の色を浮かべる。
「リル、聞きたいことがもう無いならロディニアに向かうぞ。 オークが飛び出してくるような所での野宿は嫌だろう?」
「それは絶対に嫌です! 聞きたいことはもう無いですし、急いで行きましょうです!」
「それと、フィーネは俺たちの旅仲間として迎え入れる。 異論は無いな?」
「無いです」
大きく頷く彼女を見てレイヴァンは悪魔を倒した時よりも深い息を吐いた。
これで、ようやく先に進むことができる。
レイヴァンはリルにオークを封じてくるよう指示を出した。
彼女が早速行動に移すとブライトは投げ捨てた荷物を取りに向かう。
離れた二人が戻ってくるのを待っている間にフィーネが口を開いた。
「ありがとう、レイヴァン」
「……あんたと俺の目的は一緒だ。 今別れたとしても、いずれは同じ所に辿り着く。 それならば、あんたの腕は確かだし一緒に行動した方が俺たちとしても得策と考えたまでだ」
頷くフィーネに向かってレイヴァンは真剣な表情で続ける。
「恐らく、これからの旅においてマリアンやリルは一層危険に晒されるだろう。 その時はブライトだけではなく、あんたの力も借りたい。 二人を護ってくれないか?」
「レイヴァン…… そんなに見つめられたら身体が火照ってしまって欲情を抑えられそうにないわ。 ……なんて、言ったら即お別れって雰囲気ね」
おどけて見せたフィーネだったがレイヴァンは無言で見据えてくる。
そこでようやく彼女も真剣な表情を見せた。
腰の双剣を右手で掴むと自分の左胸にあてがう。
「あなたに救ってもらったこの命と、彼女に救ってもらったこの双剣。 二つが尽き果てるその時まで、何が起きたとしても、あなたに協力すると約束するわ」
「最初からそう言ってもらえたなら、ここまで面倒な話にはならなかったと思うんだが?」
「性格上それは無理よ」
間髪を容れずにフィーネが答えると、レイヴァンは表情を緩め微かに笑みを浮かべた。
「よろしく頼む」
「こちらこそ」




