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「レイヴァン、マリアンちゃんが加わってから俺は守りに徹することが多くなり、積極的に前に出られない分、戦闘時間が長くなっていた。 凄腕の彼女が居てくれたら時間を短縮できるのは間違いない。 正式に仲間として迎え入れよう! なんだったら俺が土下座して頼んでも良いぞ!」
「お前のことだ、とてもそれだけが弁護の理由とは思えないが、その判断は間違っていないな」
頷いたレイヴァンは、マリアンへと視線を移した。
「マリアン、あんたは彼女をどうしたい?」
「え!? 私ですか!? ど、どうしたいと言われましても、私自身が押しかけの身ですし…… レイヴァンにお任せします」
「なら後はリル次第だな。 どうする?」
「ご主人様がどうしてもって言うなら、別に仲間にしてあげても良いですけど…… その前にご主人様に教えて欲しいことがあるです」
「何だ?」
「どうしてご主人様は仲間でないフィーネに指示を出して私を助けさせたんですか? リルはご主人様に助けてもらいたかったです」
「……話したのか?」
「仲間に嘘はつきたくないじゃない?」
レイヴァンがフィーネに視線を向けると、彼女は何食わぬ顔で答えた。
一つ息を吐いたレイヴァンはリルに向かって真剣な表情を向ける。
「リル、戦闘において絶対ということは有り得ない。 いつでも俺がお前を助けられる状況にはないということだ。 解るな?」
「解るです」
「そして絶対ということがない限り、少しでも有利な状況になるように行動する必要がある。 今回の場合は俺がお前を助けるよりフィーネがお前を助けだし俺がオークを迎え撃った方がより良策だったということだ」
「有利になるよう動くことも、いつも言われているから解るです。 ……でも、フィーネは仲間じゃないです。 ご主人様の言うことを聞かなかったかもしれないです」
「その通りだ。 少しは考えるようになったじゃないか」
「笑って誤魔化さないで欲しいです」
頬を膨らますリルにレイヴァンは微かに笑みを浮かべた。
軽く頭を撫でてから彼女の身体をフィーネに向ける。
「こいつに何と言われたかは知らんが、フィーネは俺が指示を出すのと同じタイミングで、お前に向かって踏み出していたからな。 恐らく俺が指示しなくても、もしくは指示を無視したとしても、結局はお前を助けに動いてくれただろうさ」
「……え!? そうなんですか? フィーネは『本当はご主人様の指示で助けてあげたのよ』って言っていたです」




