~ 83 ~
奇声を上げ襲いかかってくるオーク。
彼女はレイヴァンの前に躍り出ると、オークを引きつけ皆から離れるように走り出す。
そして十分に距離を取ったところで、直ぐに向きを変えオークとの距離を一気に詰めた。
「ご覧あれ」
そう呟いたフィーネの動きは圧巻だった。
オーク渾身の一撃を跳躍でかわし背後を取ると素早く双剣を抜き、相手が振り返るのと同時に怒涛の連続攻撃を繰り出す。
わずかな時間だったが、その攻撃はまるで踊りを舞うかの如く、力強さと妖艶さを兼ね備えていた。
魅了されたブライトやリルが我に返ったのはオークが地面に崩れ、彼女が剣を鞘に戻した時だった。
攻撃さえも色っぽいとブライトが感嘆の声を漏らせば、リルはブライトよりも役に立つと思わず呟く。
レイヴァンも彼女の予想以上の動きに舌を巻いていた。
「どうかしら?」
「どうもこうもない。 先日までの剣には重力の呪いがかかっていたのかと疑いたくなる」
「重さは変わらないから、やはり気持ちの問題かしら」
フィーネは笑みを浮かべながらレイヴァンの下へと戻ってくる。
二人の下へ立ち尽くしていたブライトたちも集まってきた。
一同が輪になり向かい合うと、フィーネがリルに対して口を開く。
「仲間にしたくなったかしら?」
「ならないです」
雰囲気的にそこは違うだろうと言いたかったブライトだったが、必死に堪えレイヴァンに真剣な表情を向けた。




