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フィーネは口を閉ざしたまましばらくリルの様子を見ていたが、堪えきれなくなったのか突然小さく吹き出す。
「あなたって意外と素直なのね」
同時に今までの厳しい表情を崩して彼女に接した。
理解に苦しむリルは何度も瞬きをして状況を飲み込もうとする。
「本当に言わなくても良かったのに」
「……何故ですか?」
「仲間を助けるのは当たり前でしょ?」
「フィーネは仲間なんかじゃないです!」
「でも、彼は私を仲間にしてくれるみたい」
フィーネが見つめる先には一匹目のオークを斬り伏せたレイヴァンがいる。
「そんなの嘘です!」
「嘘じゃないわ。 本当のことを言うと、彼があなたを助けるようにって指示を出したの。 危険が迫る緊急時に仲間でもない私を使うかしら? それにあなたは主人の判断を否定するの?」
「ご主人様が判断を間違えることはないです!」
「なら、そう言うことよ。 彼は私を仲間と認めた上で最善の指示を出した」
「……まだ信じられないです」
「後は彼から直接聞いてくれるかしら?」
フィーネは踵を返すとリルの下を離れ、レイヴァンの傍らに駆け寄った。
「あなたの移動術があれば造作もないことなのに、目配せ一つで私を試すなんて酷いじゃない」
「あんたが一瞬でも迷ったら俺が助けるつもりだったさ」
「そしてその時は私が見捨てられたんでしょうね」
「間違いないな」
「オーク退治は二つ目の課題かしら?」
「課題と言う程のことではないだろう?」
「たしかにそうね。 どちらかと言うと助けることよりも殺す方が得意だし」
不敵な笑みを浮かべるフィーネの瞳が鋭く光った。




