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何かを平手打ちする音が響いた頃、リルも抱きかかえられて救出されていた。
「ご主人様!」
恐怖から解放され感謝の意を込めて相手に抱きついた彼女だったが、顔に触れた柔らかいものに頭上で疑問符が浮かぶ。
よく引き締まったご主人様の身体では有り得ない弾力だ。
「生憎、あなたの主人じゃないわ」
そして聞こえてきた声にリルは慌てて相手を認識し突き放した。
「ど、どうして、フィーネが!?」
目を見開いて驚く彼女に対してフィーネは不適な笑みを浮かべる。
「リルは助けて欲しいなんて言ってないです!」
「私も助けるつもりはなかったけど」
「なら何で助けたですか!」
「自分の目の前で小娘の挽き肉ができるのは流石に遠慮したいもの」
「そんな心配は無用です! リルのピンチはご主人様が助けてくれるです!」
「その主人があなたを助けられないから、こうして私が代わりに助けてあげたんじゃない。 素直に感謝して欲しいわ」
「……え?」
「解らないかしら? レイヴァンは私と対峙していて、あなたは真後ろに居たのよ? しかも彼は悪魔を視線だけ移して認識して、更に仲間へ指示を出してから自らは動き出した。 あなたが直接視界に入っていた私の方がどれだけ早く動けると思うの」
きつい口調で説明され、小さくなるリル。
「ご理解いただけたかしら?」
「……理解したです」
「なら言うことがあるでしょう?」
勝ち誇った顔をするフィーネに向かってリルは小さく感謝の言葉を呟いた。
「解れば良いのよ」
「……何か悔しいです」




