~ 77 ~
ダグラスを討ち、騎士団と協力して奴隷の一部を解放してから二日が経とうとしていた。
フィーネが利用していた魔法陣は何時の間にか消滅しており、一行はブライトが監禁されている酒場まで歩いて戻ることとなった。
ダグラスの町で一夜を明かすと、前日同様に一日かけて戻り、ブライトを助け出したのはその日の夜。
久しぶりに皆で揃って食事を摂り、もう一夜をその町で明かした。
今は目的地であるロディニア国に向けて山間の田舎道を歩いている。
その日の太陽が天頂を越えた頃、レイヴァンの横を歩くリルが頬を膨らました。
「まだ追ってくるです!」
彼女が後方を振り返り睨む先には波打つ黒髪が美しい女性が一人。
不適な笑みを浮かべながら歩いている。
「リルたちは、フィーネを仲間にしたつもりは無いです! いい加減ついてくるなです!」
「私もあなたの仲間になったつもりは無いわ」
「なら、なんでついてくるですか!」
「たまたま同じ方向に歩いているだけよ」
「そんなの信じられないです!」
町を出てから分岐路は幾度となくあった。
その全てで同じ道を選ぶことが、どれだけ確率の低いことか。
あまり賢くないリルでも容易に理解できた。
「絶対に何か企んでるです!」
「今更一人二人増えたって別に良いじゃねぇか」
今にも彼女に飛びかかろうとするリルに向かって声をかけ、宥めたのはブライトだった。
何気ない一言だったのだが、それは火に油を注ぐ行為となった。
「ブライトは黙っていろです! 元はと言えばブライトが捕まったから、余計な事件に巻き込まれたんです! 責任取って、その人を追い返せです!」
「そんな事言ったってだな……」
ブライトが横目で彼女を見ると、フィーネは物欲しそうな瞳で彼を見つめ返す。
先日の一件と舞台衣装と変わらない大胆な服装が相俟ってブライトの表情は一瞬で崩れ去った。
「彼女はお前にない素晴らしいモノをたくさん持ってんだから、むしろ仲間に入れても良いと思うけど? なんたって、あの身体にあの技術で、それはもう……」
「鼻の下を伸ばして言うなです!」




