~ 76 ~
マリアンから溢れ出した力は実態の無い悪魔だけを消滅させた。
それを首を傾げるフィーネに如何に伝えようかと考えたが、にわかには信じ難い話だ。
こんな所で長話は御免と、彼女には一番単純な理由を伝えた。
「お人好しな彼女のことだ、大切な人の形見だと聞いているし、きっと不眠不休で魔力を取り除いてくれるだろうさ」
「それは期待できそうね」
「ただ……」
出来なかったことを考えると恐ろしい。
マリアンのことだ、力が及ばなかったと泣いて詫び、許しを請うことだろう。
「……ただ、どうしたの?」
「いや、何でもない。 それよりも胸の痣はどうだ?」
レイヴァンの言葉に大切なことを思い出したフィーネはすぐに胸元を覗き込んだ。
そして一瞬の沈黙の後、顔を上げた彼女は妖しい笑みを浮かべる。
「ねぇ、レイヴァン? 直接見て確認したいと思わない?」
「あのな」
「私、絶対に答えないから。 知りたいなら直接……」
「あんたの表情を見れば、答えなど明白だ。 つまらないことを言っていないで、ここを出るぞ。 騎士団にこの場所を教えたい」
「身体には自信があるのに見てくれないなんて残念だわ。 ……それとも意外と初心なのかしら?」
「どう捉えてくれても結構だ」
「あら、そう。 どう捉えても良いのね? だったらレイヴァンは好色男ってことで今夜たっぷりと御礼をさせてもらおうかしら。 絶対に満足させてあげるから」
「どういう解釈だ、それは」
レイヴァンは付き合いきれないと言わんばかりに盛大にため息をつくと一方的に話を切り上げて、さっさと部屋の外に向かって歩き出した。
「レイヴァン…… 強さも見た目も申し分ない良い男ね。 ますます興味が沸いてきたわ。 絶対に逃がさないから」
フィーネはその背を見ながら不適な笑みを浮かべた。




