~ 75 ~
断末魔が消え静寂の訪れた部屋。
二人を部屋の外に待たせておいて正解だった。
この状況を彼女らに見せることは憚られる。
レイヴァンは剣をゆっくりと鞘へ納めると目を瞑り大きく息を吐いた。
気持ちを切り替えてから、うずくまるフィーネの下へと歩み寄る。
「大丈夫か?」
「何とかね」
ゆっくりと立ち上がった彼女はレイヴァンに笑顔を見せる。
「最後まで手を煩わせてしまったわね。 ごめんなさい」
「謝るのは俺だろう。 最後はあんたに任せる約束だった」
「気にしないで。 結局私はあの力の前で何もできなかったもの。 あなたがいて良かったわ」
「そう言ってもらえると、少しは気が楽になる。 ……戻ろうか」
「待って」
部屋の外へと促すレイヴァンをフィーネは呼び止めた。
「二人の悪魔はどうするの?」
「残念だが、魔力や気配がまったく感じられない。 恐らくどこかへ逃げたのだろう」
「……それは本当に残念だわ」
自分の腰に帯びた一対の双剣を見ながら、溜め息をつくフィーネにレイヴァンは一つの提案する。
「まだ望みが消えた訳ではないさ。 剣はマリアンの力に期待しよう」
「どういうこと?」
「俺もよく解っていないのだが、彼女には魔を祓う力があるようだ」
「それは聖職者による悪魔祓いみたいなものかしら?」
「もしくはそれ以上だな」
レイヴァンは修道院での一連の騒動を思い出していた。




