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「弄んだ件はどう言い訳する?」
「私が彼女を弄んだなどと言う事実はないのですから、言い訳などするつもりはありません! 彼女は自ら望んで私に跨ったのです!」
ダグラスの言葉にレイヴァンは怒りを覚え剣を強く握りしめる。
次の瞬間には彼との間合いを詰め、鋭く突き出した剣で彼の右肩を貫いた。
「何故、剣を奪い魔力を込めたと、彼女に呪いをかけて強要したのだと認めない! あの剣に込められた魔力は上級悪魔のものだ! あんたは呪いの力を得るため悪魔と契約をしたのだろう? あんたみたいな人間がいるから、この世は!」
負傷した肩を押さえながらうずくまるダグラスにレイヴァンは剣を突きつける。
「……最後の忠告だ。 命が惜しければ彼女と剣にかけた呪いを解け」
「呪いだなんて、知りません。 剣も、弄んだ件もです! あなた、彼女に騙されたんですよ!」
「悪いが、あんたと彼女どちらが嘘をついているかなど瞳を見れば一目瞭然だ。 わざわざ生きる機会を与えたのに無駄にするとはな」
「私が嘘をつくなど……」
「あり得ないと?」
「当たり前です!」
「ここまで問い詰めても白を切るとは流石は凄腕の商人と言ったところか? このまま話が平行線を辿っては埒があかないから、後は本人同士で決着をつけてもらおうか。 俺は所詮頼まれただけだからな。 これ以上面倒な依頼は御免だ」
レイヴァンは突きつけていた剣を鞘に戻すと、部屋の外に向かって呼びかける。
呼びかけに応じて姿を現した人を見てダグラスは目を見開いた。
「フィーネ!? ま、まさか、生きて……」
「傷ついた彼女を助けたと言っただろう?」
レイヴァンが答えている間にフィーネは二人の下へと近づいた。
「ありがとう、レイヴァン。 でも今のタイミングで私に譲るのは明らかに変よ?」
「生憎、標的を譲ったりしたことが無くてね。 それに、これ以上相手をしていたら憤りから本当に始末してしまいそうだ」
「こいつは、あなたの手を煩わせるほど価値がある人間じゃないわ」
フィーネはレイヴァンを追い越し、ダグラスの正面に立つ。
「ダグラス、あなたは自分が写る鏡を見たことがあるかしら? 私が望んであなたに跨るなんてあり得ないわ」
「フィーネ、生きていたのか」
「彼に助けられたの」
「……なるほど。 それでどうして、ここに戻ってきたのです?」
「決まっているじゃない、あなたを殺すためよ」




