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レイヴァンが目の前の男を強打し意識を奪うと、部屋の奥に白髪混じりで恰幅の良い男が立っているのが視界に入ってきた。
失神した彼の代わりに答えると、彼は我に返り鋭い視線をこちらに向けてくる。
「あなたは何者です!」
「極めて普通の、何処にでもいるようなハンターさ。 で、あんたがダグラスだな?」
わざとらしい笑みを浮かべると男は益々警戒心を強めた。
「単なるハンターがここにたどり着けるはずがない!」
声を荒げていた彼だったが、ふと相手の服装が目に留まった。
自分の部下と同じ全身を黒い服装でまとめた格好に、先ほどのガープの言葉を思い出す。
「ま、まさか…… あなたがガープ殿が言っていたミカエルの剣を持つ人間」
「さて、俺はそんな名前の剣は知らないな」
小さく笑うレイヴァンにダグラスは不安と憤り、両方の感情が湧き上がってくる。
「私に何か用ですか? 私は今急いでいるのです! あなたに構っている暇はありません!」
その感情を押し殺し、あくまでも知らぬ体で部屋を出ようと歩き出す。
「用がなければわざわざ侵入したりするはずないだろう」
レイヴァンは剣を抜き、刃でダグラスの行く手を遮った。
「構っている暇が無くても、話を聞いてもらおうか」
鋭い視線にダグラスは立ち止まり息を飲んだ。
「時間がないのです。 手短にお願いしたいですね」
内心穏やかではないが、それを表情に出していては商人として失格。
話し合いでは常に自分の雰囲気に持ち込まねばならない。
ダグラスは不機嫌そうにレイヴァンを睨んだ。
「あんたが素直に応じてくれれば、すぐに終わる話だ」
「ならば、伺いましょうか」
「理解力があって助かる。 単刀直入に言おう、あんたの奴隷を全員解放してもらいたい」




