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「金貨を積み終えた馬車からすぐに出しなさい! あなたは武具をまとめるのです!」
ダグラスは慌ただしく部下に指示を出していた。
それというもの、突然夜が訪れたからだ。
ここは悪魔であるマモンとガープの力を借り、廃墟になった闘技場内に作りあげた偽りの町。
時空間をねじ曲げて作られた町は闘技場よりもはるかに広く、そして常に日が射していた。
それが現実の時間帯に戻ったと言うことは、魔力の一部が失われたことを意味している。
悪魔の力が失われるなど信じたくはなかったが、ダグラスには思い当たる節があった。
ミカエルの剣を持つという人間にやられ、深い傷を負って戻ってきたガープ。
彼は傷を癒すために何処かに向かったが、間に合わず途中で事切れたのだ。
そして彼の力の主たる役目が日を照らすことではないため焦っていた。
ガープの力を借りた本来の目的は、強力な結界で町を守るため。
外からの侵入に備え入り口の扉を堅く閉ざし、逆に中の気配や音を外に漏らさないようにするため。
明かりを失った今、その強力な結界も同時に失っていることは容易に想像できた。
使われなくなった闘技場に人の気配がするなどあってはならぬこと。
規模が大きくなければ人口も少ない町だ。
このままでは駆けつけた騎士団にすぐに見つかってしまい、とても一夜をやり過ごせない。
この偽りの町は入り口が限られている。
中に雪崩込まれてしまって手遅れだ。
騎士団に気付かれる前に一刻も早くここから立ち去るのが間違いなく最善策。
「皆さん、急ぎなさい! 時間がありません!」
ダグラスは声を荒げて指示を飛ばした。




