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「正直言って、あんたが生きようが死のうが俺にはどうでも良いことだ。 あんたの言うとおりメフィストフェレスの情報だけもらえればそれで良い。 ……だが、あんたはそれで本当に良いのか? 仇であるメフィストフェレスを討てぬまま命が尽きても良いと?」
問い質しても答えないフィーネに向かってレイヴァンは続ける。
「俺だったら仇を討てないまま死ぬのは御免だ。 討つまではどんな手を使ってでも生き続けてみせる」
「……それで今の私にどうしろと?」
「もし俺があんたと同じ状況だったら、目の前にいる人間を騙してでもダグラスを討たせるように仕向けるだろうな」
「それって……」
フィーネの考えが纏まる前にレイヴァンは動き出した。
「マリアン、そろそろ出発しよう。 リルは彼女に剣を返してやれ」
「わかったです!」
リルは満面の笑みを浮かべるとフィーネに二本の剣を手渡した。
続けて短剣を納めた皮ベルトも二つ手渡す。
「返してもらえて良かったですね」
そして最後に一言声をかけると、すでにマリアンと共に歩き出した主人の下へと駆け寄った。
「ご主人様」
「どうした?」
「ご主人様は相変わらず素直じゃないです。 こういう場合、長い説明は要らないです」
「俺の性格だ、どうにもならん」
「リルなら簡単に言っちゃうですよ!『お前は俺が助ける。 だから命を粗末にするな。』です! 十分通じると思うです」
「それこそ俺が一番嫌いな台詞だ」
そう言いながらもレイヴァンの口元には笑みが零れた。
リルの頭に軽く手を置き髪を撫でてやる。
「たまにお前の性格が羨ましいと思うぞ」
「よろしければ、今後はリルが代わりに答えてあげるです!」
「無茶な依頼を勝手に受けられても困るからな。 それは止めてもらいたい」
「……それは残念です」




