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「それはメフィストフェレスに関することかしら? それなら今すぐ私が持ち得る全ての情報を話してあげるわ」
「いや、今聞きたいのは逃げ去った悪魔やダグラスのことさ」
「あなたには、お友達の居場所も伝えたしメフィストフェレスの情報も提供すると言っているのよ? 情報だけ聞き出せば、こんな所さっさと抜け出してしまえば良いじゃない! それなのに、どうして今更そんなこと聞くのよ!」
「ここの有り様に腹を立てていると言っただろう。 それに、もしこれ以上あんたの依頼を遂行する必要が無いのなら、この際持て余した力を彼女のために使おうと思ってな」
声を荒げる彼女に対し、レイヴァンは不安そうにこちらを見守るマリアンを指差して答える。
「……彼女はあなたに何を頼んだのよ」
「ここに捕まる奴隷たち全員の解放さ」
「ば、馬鹿なこと言わないで! ここに何人ダグラスの部下が居ると思っているの! 彼らはマモンの魔力に絆されていて並みの人間の力ではないのよ!」
「それは知らなかったな。 だが、この国の騎士団が数百騎ここを目指しているらしい。 彼らが来れば状況は間違いなく好転するだろう。 それなら彼らが見つけやすいように中で盛大に騒ぎ立ててやるまでだ」
「レイヴァン! この町はガープの結界で強力に守られている。 奴が死なない限り外の騎士団が中に入るのは不可能に等しいの。 援軍なんて夢のまた夢よ」
「だったら、やはり悪魔を討つための情報を教えてもらうしかないかな」
口元に不適な笑みを浮かべる彼にフィーネは首を振った。
「奴隷全員を解放するとか、とても正気とは思えないわ」
「初めから相打ち覚悟で悪魔に挑む人間よりは正気だと思うが?」
「ふざけたこと言わないで!」
「ふざけているのは間違いなくあんたの方だろ」
レイヴァンに鋭く睨みつけられ、フィーネはたじろいだ。




