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「マモン、私は一度ルシファー様の下へ戻ります。 眠る王のお近くならば魔力が高まり、この傷も癒えるはず」
「そうするのが良かろうな。 私もお前に付き添おうぞ」
「いえ、そこまでの配慮は無用です。 魔法陣を潜るだけですので」
「何を言うか! これ以上魔力を使ったら、お前は朽ち果てるぞ!」
「それぐらいでは果てませんよ。 心配し過ぎです。 あなたはここでミカエルの剣を持つ人間にとどめを刺してください」
「わ、私がとどめを刺す?」
「そうです。 何もせず逃げるのは癪に触りましたから、彼らを風の魔法陣に閉じ込めてきました。 普通の人間なら風の刃に切り刻まれ死に至るのですが、相手はミカエルの剣と力を持つ人間。 万が一ということが考えられます」
「奴の剣を持つ人間とは言え、お前の魔法陣にかかって生き延びられる人間などいるものか!」
「嬉しい言葉ですね」
「……別に誉めてはおらん」
「大丈夫ですよ。 あなたの呪縛と幻惑の力があれば容易く討てるはずです」
マモンはしばらく唸った後、意を決し頷いた。
「解った。 私がその人間の生死を確認してこよう。 もし生きていれば、とどめを刺し亡骸をルシファー王に届けようぞ」
「その意気です」
「茶化すな。 お前はさっさと傷を治しに行け」
「そうさせてもらいます」
「お待ち下さい、ガープ殿!」
二人のやりとりを聞いていたダグラスが突然声を上げた。
「私の金貨を別の場所へ移動していただくお約束が残っております」
「すみません、ダグラス。 今の私はそこまでの力が残っていません。 傷が癒え次第戻ってきますので、移動はその時に」
「ですが、外には大勢の騎士が迫っているのです。 今移動して頂かないと……」
「それは心配無用です。 私が生きている限り私が張ったが結界が消えることはありません。 この場を離れていてもです。 故に見つかることはありませんよ」
「それなら良いのですが…… しばらくは籠城ですか」
「なに、外の世界はもう日が沈んでいます。 一夜を通し何も見つけられなければ愚かな人間たちのことですから、すぐに撤退するでしょう」
「それはあり得ますね」
ダグラスが不適な笑みを浮かべた。
ガープは床に描かれた魔法陣に移動すると意識を集中した。
怪しく光り始める円の中心で彼はダグラスに声をかける。
「よくよく考えると、騎士がいなければ私の力に頼らずとも容易に金貨を運び出せてしまいますね」
「確かに!」
ダグラスが笑いで答える中、ガープは続けて「しばらくの間よろしく頼みますよ」とマモンに声をかけ、二人が見送る眼前で魔法陣へと潜っていき姿を消した。




