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「隠せるとしたら……」
リルは迷うことなく彼女のスカートを掴んで捲り上げる。
悲鳴を上げるマリアンの横でリルは自分の勘が正しかったことに笑みを浮かべた。
「ご主人様、脚に短剣が巻き付けてあるです!」
「何本ある?」
「両脚で六本です!」
その言葉にレイヴァンはしっかりと頷いた。
「それを拝借しよう。 リル、その短剣を全部取れ。 刃には毒が塗られているから気をつけろよ」
「解ったです。 皮のベルトごと外すです」
リルはしゃがみ込むと彼女の両腿に巻き付けられたベルトを取り外しにかかる。
「マリーさん、時間がないので、もう片方のやつを外して欲しいです」
「そ、そんなこと言われても…… 恥ずかしくて……」
「これぐらい女同士なら恥ずかしくないです。 それにリルはあの竜巻に巻き込まれたくないです」
リルは一瞬顔を起こし迫る風を見ると再度ベルトを外しにかかる。
「あんな強い風に吹かれたらリルのスカートまでめくれちゃうです! マリーさんのロングスカートだって一瞬ですよ? 自分のが捲れるぐらいなら、この人のを捲るです。 ……これは、なかなか複雑な感じです」
リルが悪戦苦闘していると、横たわるフィーネを挟んで向かい側にマリアンが膝をついた。
「ミカエリス様、他人を犠牲にするのは教えに背くので心苦しいですが ……二人の貞操を守るため、お許し下さい」
彼女は小さく呟くと目の前のリルに外す手本を見せる。
「リルさん、こうやって外すんです」
マリアンは手際良く先に皮ベルトを外し彼女の前に掲げると、リルはそれを真似てようやく外し終えた。
「流石はマリーさんです!」
二人は互いに頷き合うとレイヴァンに駆け寄り物を手渡す。
「たかがベルトを外すのに時間をかけすぎだ」
「ごめんなさいです。 でも、これで同じものが三つ以上手に入ったですね」
「そうだな。 これで後は上手く術が発動できるかどうかだ」




