~ 53 ~
恐ろしい勢いで吹き荒れ迫る風は砂だけではなく小さな岩をも巻き上げて更に迫ってきている。
いよいよ時間がなくなってきたな。
このままだと皆風の刃に引き裂かれて挽き肉になりそうだ。
「ご主人様?」
目を瞑り考えていたレイヴァンにリルが声をかける。
「どうしかしたか?」
「使っていない精霊石はダメですか?」
「残念だが、風に飛ばされて一瞬で終わりだな」
「ダメですか……。 そうなると同じ物はこれぐらいしか無いです。 リル一生懸命探したんですけど見つけれなかったです。 ごめんなさいです」
肩を落とすリルは主人に二本の黒い剣を差し出した。
フィーネの使っていた双剣か……。
自分の剣を足せば三本になるが、これで上手くだろうか。
いっそのこと彼女が双剣使いではなく三つの剣を扱う者だったら良かったな。
……仮説をいくら並べても無駄か。
自嘲の笑みを浮かべたレイヴァンだったが、彼女の剣という言葉から交戦中に聞いた一言を思い出した。
そうだ、あの時フィーネは……
何かに気がついたレイヴァンは改めてリルに指示を出す。
「リル、今度は彼女の身包み全部捲って確認しろ。 俺の考えてが正し」
「レイヴァン、ダメです!」
「だから……」
マリアンに言葉を遮られ頭を抱えるレイヴァンは彼女を諭そうとしたがすぐに止めた。
今は少しの時間が惜しい。
「リル、さっきこいつは毒が効くまで何度でも試すと言った。 つまり彼女はまだ何本か短剣を隠し持っているってことになる。 それを探せ」
「解ったです! 解ったですが……」
リルは未だ意識を失ったまま横たわるフィーネに視線を送る。
彼女はマリアンや自分とは違い、かなりの軽装だった。




