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リルは小さな手を彼女の服に伸ばし、そっと捲る。
「……血がべっとりと身体に付いて良く解らないです」
「なら拭って確認しろ」
「リル、これ以上血だらけの身体なんて触りたくないです。 ご主人様が直接確認して下さいです」
「あのな……」
「それは絶対にダメです!」
レイヴァンがリルを諭そうとするよりも早く、様子を見守っていたマリアンが顔を真っ赤にしながら悲鳴に近い声を上げた。
「異性の肌を覗き見る、ましてや触れるなんてこと絶対にダメです!」
「解っている。 だから、こうやってリルに頼んでいるんだ。 リル、時間無いんだ。 死にたくないなら、さっさと確認しろ」
「……解りましたです」
恐る恐るフィーネの身体に触れ血を拭うリルは、しばらくして驚きの声を上げる。
「お、大きい上に柔らかい…… 何か腹立たしいいです!」
「リルさん! そうじゃなくて!」
「マリーさん、ごめんです。 思わず間違えたです」
「リル、痣があるのかどうかを伝えろ」
背を向けているレイヴァンの声にリルは大きく頷いた。
「左胸に変な模様があるです」
……やはりまだあるか。
「フィーネの治療はここまでだ。 彼女はこのままの状態で迫る風をやり過ごす」
「それって置き去りにするということですか?」
マリアンはレイヴァンに疑問を投げかけたが、表情はそんなことは許さないと続けていた。
「そうじゃない。 これからやろうとしていることが失敗した場合を考えてのことだ」
「いったい何をするつもりなんです?」
「……迫る風を結界を張ってやり過ごす」
思わず声を上げる二人。
「ご主人様、結界の術できるんですか?」
「いいや、試したことすらないな」
「それって何か不安です……」




