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レイヴァンはすぐにフィーネの下に駆け寄り、彼女の容態を確認する。
背中の傷は深く、かなりの血が流れていた。
既に意識を失っており、呼びかけても反応はない。
手遅れだったか?
不安になりながらも、そっと首筋に触れると微かに脈を感じることができた。
何とか生きている。
この状態なら後はマリアンの力で。
再度声をかけようとしたが、彼女は既にフィーネの横に腰を下ろし意識を集中している。
ゴブリンが切り裂かれた姿を見て腰を抜かすぐらい情けないのにな。
人を助けようとする時は妙に頼もしい表情をする。
彼女の姿を微笑ましく思いながらフィーネの傷が次第に塞がっていく様子を見守っていたレイヴァンだったが、ふと一つの不安がよぎった。
意識を取り戻した彼女は大人しくしてくれるだろうか?
またマリアンの命を狙って戦おうとするのでは?
時間が無い今は無駄な戦闘は避けるべき。
判断する目安になるのは……。
「マリアン、そこまでだ」
レイヴァンは治療に集中している彼女の腕を取った。
「と、突然どうしたのです!? まだ傷口が塞がったばかりですよ?」
「彼女が意識を取り戻す前に確認しておきたいことがある」
首を傾げるマリアンを下がらせるとレイヴァンは血溜まりからフィーネを抱きかかえた。
「え!? あの、レイヴァン? いったい何を?」
「彼女に悪魔の呪いが残っているのかを確認する」
レイヴァンは数歩移動すると血の無い地面にフィーネを仰向けに寝かせた。
それからリルを呼びつける。
「リル、時間が無い。 すぐにこいつの左胸に痣があるか確認しろ」
首を傾げるリルにレイヴァンは語気を強めて再度指示を出す。
「フィーネの左胸に悪魔が施した印があるかどうかを確認するんだ」
「は、はいです!」
主人の荒げた声にリルは慌ててフィーネの傍らに座り込んだ。




