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フィーネは残ったもう一本の黒い剣と短剣で反撃に転じようとするが、レイヴァンは出鼻を挫き彼女の剣を二本立て続けに払い退ける。
息をつく暇を与えず更に剣を薙ぐと、彼女の胸部をわずかに捉えた。
服の一部が裂け、胸元にうっすらと赤い筋が走る。
初めて彼女に傷を負わせ、少し流れを掴めてきたと実感できた。
レイヴァンは更に追い討ちをかけようと剣を振り上げたが、ふと彼女の胸元を見て振り下ろすのを躊躇った。
裂けた服から垣間見える肌には痣があった。
それは不気味な雰囲気を醸し出しており、自分の右手甲にあるモノに酷似している。
呪印。 悪魔にかけられた呪い。
そう話したのは目の前にいる彼女だ。
考えを巡らせると疑問が浮かび上がる。
同時に心臓が高鳴った。
悪魔の呪印は、悪魔にもあるのか?
レイヴァンは慌てて彼女との距離を取った。
「その痣は本物か?」
剣を構え直しフィーネに問いかけると、彼女は昨日のように笑みを浮かべるだけで返事をしない。
ただ、今までのような力強さが無くなっており、どちらかと言えば物悲しそうな表情を浮かべていた。
「もしそれが……」
彼が続けて問い正そうとした時、彼女は短い呻き声と共に前のめりに倒れこんだ。
地面には血溜まりが広がっていく。
突然のことに三人が呆気に取られていると、何処からともなく声が聞こえてくる。
「やはり人間は当てになりませんね。 これ以上は時間の無駄です。 封印の楔は私が始末することにしましょう」
フィーネの傍らに音もなく現れた長身の男は細身の黒い剣を持ち、背中には黒い翼があった。




