~ 42 ~
「まさか、美しく舞うあんたが悪魔だったとはな」
鋭く相手を睨むと彼女は笑みを浮かべたまま、ゆっくりと距離を詰めてくる。
「そこを退いて」
「マリアンを殺らせるわけにはいかない」
「邪魔をするなら、あなたを先に殺すわ!」
語気を強めたフィーネが細身の剣を振るうと、レイヴァンは迷わず応戦した。
二人の剣が交差して甲高い音を立てる。
「ブライトは何処に居る。 殺される前に答えろ」
彼女の剣を払い、今度はレイヴァンから斬りかかった。
一歩踏み込み胴を狙うと、彼女は器用に身体をひねらせて斬撃をかわす。
そして間髪を容れずに二本目の剣を抜き、身体が戻る反動を利用して胸元を目掛けて薙ぎ払いを返してきた。
一瞬で攻守が逆転するとレイヴァンは短く舌打ちし、引き寄せた剣で攻撃を受け止めた。
フィーネはレイヴァンの動きを見計らったかのようにもう一本の剣で反対側の脇腹を鋭く突いた。
剣の切っ先がコートを掠め、彼がわずかに体勢を崩すと彼女は更にもう一太刀を繰り出す。
切り上げた剣は再び胸元を襲った。
無駄のない動きと一番回避し辛いタイミングでの追撃。
隙のない連続攻撃にレイヴァンは舌を巻いた。
数手交えただけだが彼女はかなりの手練れだと確信できた。
「これほど双剣を巧みに扱う悪魔が居るとはな」
言葉を投げかけるが彼女は無言のまま剣を構え直す。
レイヴァンも後ろに下がり剣を握り直すと、背後からリルが「ご主人様……」と不安そうに声を上げた。
「そう心配するな。 すぐに終わらせる」
これ以上後ろに下がれない彼は二人に声をかけると先手を取り、再度彼女との間合いを詰めた。
まずは厄介な双剣をどうにかしなければ。
素早く袈裟斬ると彼女は身体の軸をずらして剣をかわした。
そして反撃しようと剣を振り上げる動作をみせる。
レイヴァンはその動作が大振りだと気がつくと、ここぞと言わんばかりに柄を握る彼女の拳を目掛けて剣を振り上げた。




