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「どうしてです! どうして、レイヴァンはこの現状を目の当たりにして、そこまで冷淡な事が言えるんですか!? 何とも思わないんですか!?」
「何も思わない訳ないだろう。 ただ、今俺たちがやらなければならないことはブライトの救出なんだ。 その為にはダグラスから双剣を奪回しければならない。 ここで騒ぎを起こし彼に逃げられたら取り返しがつかないことになる。 それに、ここに悪魔がいる可能性がある限り戦う力を温存しておかなければならない」
「そんな…… 嫌です。 あの子たちをこのまま見放すだなんて…… 私にはできません!」
レイヴァンは今にも泣き崩れそうなマリアンの背に腕を回すと、なだめるように二度軽く叩いた。
「人間一人が出来る事は限られている。 辛いかもしれないが、今は先を目指そう」
諭すように話しかけても彼女は首を縦に降らなかった。
「お願いです、レイヴァン。 どうか……」
「女性に対しても厳しいのね」
大通りを抜けた先で立ち往生していると、前方から覚えのある声が聞こえてきた。
見れば昨夜出会った踊り子のフィーネが立っている。
「どうして、ここに?」
「いろいろあってね」
訝しむレイヴァンが彼女と対峙すると、彼女の腰に一対の剣があることに気がついた。
「剣、取り返せたのか?」
「形だけは」
「それは良かったな。 ……しかし、そうなると、依頼の話は無かった事になってしまうのか? 勝手を言って悪いがブライトは解放してもらいたい」
「安心して。 ダグラスを討ってくれれば、お友達は解放するわ」
「それが残っていたか。 正直なところ、ここの有様に少々腹を立てていたんだ。 その依頼は引き続き俺が請け負おう」
「そうしてもらえると助かるわ。 でも……」
何かを言おうとして黙り込んだ彼女は、伏し目がちにマリアンを見つめている。
「何かあったのか?」
「緑髪に白い服装の女。 ただでさえ女が少ない奴隷市だもの、彼女以外には居ないでしょうね」
「何が言いたい」
「ねぇ、レイヴァン。 あなた封印の楔って知っているかしら?」
「詳しくは知らないが、ダグラスの探している人間らしいな」
「私、その人間を殺さないといけないの」
静かに答える彼女はおもむろに腰に帯びた鞘から剣を引き抜く。
その刃を見たレイヴァンは彼女とは対照的に素早く抜剣すると正眼に構えた。




