~ 38 ~
増幅された痛みに耐えきれずフィーネは悲鳴を上げた。
「フィーネ、お前はただ立っているだけでも美しい女だ。 振り返らぬ男は居まい。 だがどうだ。 こうして顔を歪ませ、痛みにあえぎ苦しみ身悶える姿はより一層美しい」
ダグラスは高ぶる気持ちを抑えながら続ける。
「さぁ、仕事です。 ガープ殿の結界を破り陣内に侵入した者を、この剣で刺殺して来なさい。 心臓を突く以外の殺し方は認めません。 良いですね? ……仕事を完遂できたら、この美しい身体に私がたっぷりと褒美を与えましょう」
ダグラスは笑いながらフィーネを手荒く解放すると彼女に背を向ける。
そして元居た場所へと足を進め席に着こうとしたところで大切な事を一つ思いだした。
「標的は緑髪に白い服を着た女で、封印の楔と言う存在です。 それと黒い服を着た者が同伴しているようですが、私の部下でなければ殺してくれて結構です。 こちらは殺し方を問いません」
フィーネは呼吸を整えながら「かしこまりました」と頭を下げたが、握りしめた二つの拳は小刻みに震えていた。
フィーネが部屋を出て行くと様子を見守っていた悪魔二人がダグラスに話しかける。
「あの女で本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫です、マモン殿。 心配は要りません。 かなりの腕前ですよ」
「そうは言うもののマモンが与えた呪縛の力だけではやはり心配ですね。 ここは姿を消せる私が彼女について行き監視することにしましょう。 指示に背いたり侵入者を殺せなかった場合は私が容赦なく始末させてもらいます。 良いですね、ダグラス?」
「ガープ殿にお任せします」




