~ 34 ~
「笑いが止まらぬとは、まさにこのこと!」
ダグラスは自室に運び込まれる大量の麻布袋を見て笑っていた。
もちろん袋の中には人間を売りさばいて儲けた金貨が詰まっている。
「精が出ますね」
ダグラスの様子を見て恰幅の良い悪魔マモンが呟いた。
「ところで例の人間は見つかりましたかな?」
「残念ながら未だ見つかっておりません」
「そうですか」
「封印の楔が魔法を受け付けないというのは間違いないのですか? 探し方を変えた方が良いのでは?」
「探し方に間違いはありませんよ。 我々の力を無効にしてしまうのが封印の楔。 捕まえた人間たちに魔力の火で熱した烙印を押す。 本物の封印の楔なら一切火傷を負わないはずです」
「それならば良いのですが……」
「最後の封印の楔です。 焦ることはないですよ」
「私は焦るべきかと思いますが」
マモンが笑っていると室内にもう一人別の声が響く。
地面に描かれた魔法陣の上に、背の高い悪魔が現れた。
「これはこれはガープ殿、外の様子はいかがでしたかな?」
「情報のあった騎士団は、かなり大勢で二百騎は居ますね。 数時間もすれば先駆隊に合流するでしょう」
「二百ですか……」
「ここがバレると厄介ですよ」
「しかしガープ殿が居る限り、ここの結界は破られないのでしょう?」
「それはそうですが……」
ガープが言葉を濁すとマモンが声を上げる。
「言いたいことが有るならはっきり言ったらどうです!」
「そうですね。 ……実は一瞬だけ結界を破られました」
予想以上の発言にダグラスとマモンは顔を見合わせた。
「あなたの結界は人間には破れないはず。 どういうことですかな?」
「確かに普通の人間ならばそうです」




