~ 33 ~
レイヴァンが扉を押し開くとその先は闇が続いていた。
「真っ暗で何も見えないですね」
「これが闘技場の作りな訳はないな。 リル、灯りになるような精霊石はあるか?」
「ちょっと待って下さいです」
リルはポケットから小さな袋を取り出すと、中を覗き見てから数回首を横に振った。
「補助系は全部ブライトの袋に入れたままです」
「なら、このまま行くしかないか。 二人ともブライトみたいに逸れるなよ」
レイヴァンは驚きと不安の声を上げる二人を更に中へと促す。
「ご主人様、暗くて怖いです。 逸れないように手をつないで欲しいです」
「断る」
「レイヴァン! そうやって即否定するなんて、ひどすぎます! リルさんが可哀想です!」
「あのな……。 わざわざ抜剣できなくなるような状況を作り出せる訳ないだろう。 それにリルは暗闇でもある程度目が利くんだ 。昨日の山道と大して変わらないさ」
残念そうに肩を落とすリルの手をマリアンがそっと握りしめた。
「リルさん、私と繋ぎましょう。 正直私も暗くて不安なので、明るくて元気なリルさんと手を繋げたら心強いわ」
優しく微笑みかける彼女に対してリルも笑顔を返した。
「マリーさん、ありがとうです!」
手を握り直し互いに頷くと、二人は足並みをそろえて奥へと歩き始める。
三人が奥へと足を進めると、見計らったように扉が低い音を響かせながら閉まった。
闇が深まり女二人が悲鳴を上げているその横でレイヴァンは表情を険しくしていた。
「どうやら相手は俺たちを歓迎してくれるようだ」
扉が閉まるのと同時に一瞬で膨れ上がった禍々しい力。
結界が悪魔の仕業だと確信できた。
そして本能が悪魔はダグラス一人ではないと感じ取っている。
双剣を彼から取り返して解決と言う訳にはいかないだろう。
遠くからこちらに向かって火が一定間隔で点される。
闇の中に独りでに浮かび上がった一本道。
身を震わせ抱き合う二人を促すとレイヴァンはゆっくりと歩き出した。




