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魔天創記 (参)  作者: ちゃすけ丸
第5章
33/87

~ 32 ~

「ごめんください! どなたかいっらっしゃいませんか?」



 その様子を見たレイヴァンは目を見開いた。



 リルは主人の隣にやってきて小さな声で呟く。



「ご主人様、こういう人を天然って言うんですよね? 昔ブライトに教えてもらったです」



「……否定はしない」



 今の精霊石による爆破を見ていなかったのかと叫びたかったが、彼女は尚真剣な表情で扉を叩いている。



「私たち、人を助けるためにダグラスさんにお会いしたいんです! 中に入れて下さいませんか!」



 マリアンが何度扉を叩き、声を張り上げても反応は一切無かった。



 もうそれぐらいにしておけとレイヴァンが声をかけようとすると、わずかに早くマリアンが更に声を大にして叫んだ。



「私、ダグラスさんが探している封印の楔なんです! 正直なところ私には良く解らないんですけど…… 他の悪魔が言っていたから間違いないですよ! どうです? 扉を開けてはくれませんか?」



「マリアン! あんたいきなり何を叫ぶんだ!」



「ごめんなさい、レイヴァン。 私が出来ることは、これぐらいなので……」



「そんな事を言っても、扉は開きはしない!」



 気まずそうな表情を浮かべる彼女に詰め寄るレイヴァン。



 その彼のコートを掴んで引っ張るリルは静かに扉を指していた。



「ご主人様、扉が開いてるです」



 耳を疑ったレイヴァンだったが、見れば本当に扉は開いていた。



 爆破しても一切動かなかった扉が、今はマリアンの願いに応えてわずかに開いている。



 そんな馬鹿な!



 声に出して叫びたかったが、それよりも先に背筋に寒気が走った。



 扉が開いたと言うことは、彼女の発言を聞いて開けた者が居ると言うことだ。



 レイヴァンは表情を引き締め、何時でも抜剣できるように腰を低くして構えた。



 気を張って周りを見渡し、疑わしい気配が無いかを探る。



 今のところ怪しい気配は無い。



 しばらく警戒した後、構えを解くとすぐに二人を扉へと促した。



「明らかに罠だとは思うが、こうなったらさっさとダグラスに会って双剣を返してもらおうか」

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