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その一言にマリアンを驚きの声を上げた。
「あいつは俺のことを主人と呼ぶだろう?」
「そ、そう言われれば……」
「彼女にとって俺の指示は絶対であり、俺の代わりに危険な事をしないといけないわけだ」
「そんなの駄目です! あんなに可愛いリルさんを奴隷として扱うだなんて…… レイヴァン、あなたって人は! ……見損ないました! 人として最低です!」
からかってみただけなのだが、予想以上にマリアンには冗談が通じないようだ。
悪いと思いつつも笑いがこみ上げてきて止まらない。
「すまない。 冗談が過ぎたようだ。 正確に言うと奴隷だと言っているのはリル自身であって、俺は奴隷だなんて微塵も思っていないさ」
「本当ですか?」
「もちろんだとも」
「それなら何故リルさんは自らを奴隷だと言うのでしょう」
「おそらく、それは……」
「それは?」
「いや、今は止めておこう。 語るには時間が無さ過ぎる」
「そんな…… 勿体ぶらないで下さい」
「危険な所に向かったリルのことが心配なのだろう? そろそろ動いても気が付かれることはないだろうし、俺たちも後を追おうか」
「レイヴァン、さり気なく話を逸らそうとしていませんか?」
「そんなことはないさ」
「それなら後で必ずお話しして下さいね?」
「考えておくよ」
レイヴァンはわざと含み笑いをマリアンに見せると馬車が走り去った跡を追って駆けだした。




