~ 2 ~
鬱蒼と木々が生い茂る山中。
レイヴァンは襲来した最後のゴブリンを斬り伏せ瀕死の状態にすると腰に携えた鞘に剣を戻す。
そして近くで見守っていたリルに目配せをすると彼女は心得たとばかりに精霊石を取り出した。
軽い足取りで次々とゴブリンを精霊石に封じ込めていくリル。
マリアンはその状況を不思議そうに見つめていた。
「封印完了です、ご主人様!」
全ての封印を済ませたリルが駆け戻ってくるとレイヴァンは頷き再び歩き始める。
「思わぬところで時間を費やしたな。日が沈む前に予定していた町にたどり着くぞ」
彼が見つめる先には木々の隙間から町の明かりが見えていた。
「……あの、レイヴァン?」
当たり前のように歩き出した彼に対し心配そうに声をかけたのはマリアンだった。
「先ほどからブライトさんが見当たらないのですが」
「戦闘中に逸れたからな」
「逸れたって、そんな簡単に!」
慌てる彼女とは対称的にレイヴァンは落ち着き払っている。
「逸れたのがあんただったら捜しただろうが、ブライトだからな。 心配は要らないさ。 むしろ捜しているうちに日没を向かえたら俺たち三人が暗闇の中で身動きがとれなくなる。 夜は悪魔がより凶暴になるし、そちらの方がより危険だ」
「ですが……」
「マリーさん、気にしちゃダメです。 ブライトはアホだけど逃げ足と食べ物への嗅覚はご主人様より優れているです! どうせ既に酒場にたどり着いてご飯でも食べてるに違いないです! だから、マリーさんも急いで歩きましょうです!」
「あの、リルさん? マリーって言うのは、やはり私のことでしょうか?」
「もちろんです! マリアンさんって名前は長くて難しいので、マリーさんです!」
「そう言うことですか。 ……って、リルさん!? そ、そんなに強く引っ張らないで下さい! 暗くて歩き難いんです!」
「大丈夫です、リルは暗闇でもよく見えてるから道案内するです!」
マリアンの心配を余所にリルは彼女の腕をぐいぐい引っ張って山道を下り始めた。