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小さくなっていく黒猫を見つめレイヴァンは微笑する。
その姿を見たマリアンはまた不服そうに頬を膨らませた。
「レイヴァン! リルさんに危険な事をさせないで下さい! 何かあったらどうするんですか!」
「あんたがダグラスのアジトに辿り着くまでの間、馬車に引き離されないように走り続けられるなら、リルには走らせなかっただろうな。 ……できるか?」
「そんなの無理です」
「だからリルに任せたんだ。 あいつは走るのが得意だからな」
「だからと言って、怖い人たちが大勢居る危険な場所に向かわせるなんて酷いです!」
「何も戦えとは指示していないだろう。 それにあの姿だ、まさか人間だと気付かれることは無いさ」
説明するものの、なかなか納得しないマリアン。
頭の固い修道女だとレイヴァンは頭を抱えつつも、真面目過ぎる彼女が性格が面白く思えてきた。
「知っているか?」
「何をです?」
「今回何かと話題になる奴隷についてさ」
「もちろん知っています。 人でありながら人としての権利を認められず、様々な労働を強制され、売買される方たちのことです」
「……何か偉大な書物に出てきそうなほど模範的な回答だな。 まさにその通りさ、奴隷ってのは危険が伴う過酷な重労働を強要され、時には主人の欲を満たすために弄ばれる」
「どうしていきなりそんな話をするのですか? 今はリルさんに優しくしてあげて欲しいと話をしているのです」
「解らないか? リルは俺の奴隷だ」




