~ 26 ~
「た、大変だよ、兄貴!」
一触即発の雰囲気が漂う中、店の扉が勢いよく開き、慌ただしく若い男が入ってきた。
「奴隷市が開かれると聞きつけた騎士団の先駆隊が、この町に向かっているって! 早いとこ、ずらからないと捕まっちまうよ!」
彼の言葉にレイヴァンを取り囲んでいた男たちが各々に驚きの声を上げた。
明らかに浮き足立っているのが解る。
リーダー格の男はそれを制するように声を張り上げた。
「馬鹿やろう! 寝ぼけたこと抜かしてんじゃねぇ! 国の騎士が怖くて誘拐ができるかってんだ! 先駆隊なんてどうせ四、五人だろう? 返り討ちにしてやるまでよ!」
「そ、そうですけど、今回は国も本気っぽいんです! 本隊には百もの騎士が控えているって情報が!」
「ぎゃあぎゃあ喚くな! ダグラスさんのアジトは特別な結界で守られているんだ。 騎士たちが何人で来ようが、見つけることさえ出来やしねぇ!」
「じゃあ早くそのアジトに行きましょうよ!」
「そんなことは解っている! だが、その前に目の前にいる女をいただくのが先だ!」
手下を諭すと力強い視線でこちらに向き直るリーダーの男。
それに感化されて周りの男たちも威勢を取り戻す。
浮き足だったり威勢が良くなったり、何とも単純な奴らだ。
「悪いが俺は騎士たちがやってくるまで抗うぞ。 それでも良いのか?」
「安心しろ。 一瞬で終わりだ」
狭い店内で剣を抜く男たち。
無駄な戦闘は避けたかったが、さすがにここまでか。
レイヴァンも腰に差した剣の柄に手をかけた。
抜剣しようとすると再び店の扉が開いた。
顔を見せたのは先程助け、ダグラスとの仲介を約束した男だった。
彼は店内へ一歩踏み出そうとして動きを止める。
こちらに気がつき、何とも気まずそうな様子な表情を浮かべている。
「次から次へと…… 今度は何だ!」
襲うタイミングを逃し苛立ちを隠せないリーダーの男。
入ってきた若い男は、一瞬レイヴァンに視線を向けてから口を開いた。




