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中に入ると案の定屈強な男たちが一斉にこちらに視線を送ってくる。
その数およそ十人。
レイヴァンはその男たちの顔を一人ずつ確認して先程の男がいないか捜したが見当たらなかった。
「いらっしゃいませ」
入り口で立ちすくむ形になってしまった彼に向けて店のマスターと思しき男が何食わぬ顔で挨拶をしてきた。
「ここで待ち合わせをしているんだ。 来るまで待たせてもらうぞ」
「どうぞどうぞ、こちらの席に」
促されカウンター席に座ると、彼は丁寧な口調で何を飲むのかと尋ねてきた。
何も必要ないと答えると、まるでそれを合図にしたかのように周りの男たちが動き出す。
あっと言う間にレイヴァンたちを囲むと、一人の男が前に進み出た。
彼は良く日焼けしており露出した腕には大小様々な傷跡がある。
強持ての顔に堂々たる風貌は集団の長であると容易に想像できた。
「俺たちの合い言葉を知らないとなると、やはり余所者だな。 悪いことは言わねぇ、無事にこの店を出たいなら、女は置いていくことだ」
「あんたらはそうやって人をさらっているのか?」
「自分たちのアジトで待ち伏せをするのは稀だな。 普段は山道を行き交う旅団や貧しい村を襲っている」
多勢に無勢と言いたいのか彼は、にやけた表情を浮かべると腰の剣に手をかける。
レイヴァンは不安そうに声を上げるマリアンの肩に軽く触れると立ち上がり、ゆっくりと彼と対峙した。
「この距離で存分に剣を振れるとでも思っているのか?」
「やけに冷静じゃねぇか」
「一人で行動することが多いからな。 こんな場面には嫌と言うほど遭ってきている」
「従わないなら容赦はしないぞ」
「この女は俺がダグラスに売りつける。 あんたらに渡すつもりは毛頭無い」
「生意気な目だ。 貴様はこの状況が解っていないらしいな」
「人数が絶対的な優位差ではないことを教えてやろう」
「あの世で後悔するなよ」
「あんたらは地獄で俺に声をかけたことを後悔すると良いさ」




