~ 24 ~
隣町は静かな町だった。
それは自然豊かな田舎町という意味合いではなく人口の過疎化と建物の荒廃が進んでいるためだ。
町を行き交う人は少なく、目抜き通りに軒を連ねる店でさえ大半の扉が閉じられたままになっている。
「寂しい町ですね」
「表向きはな」
未だ眠り続ける黒猫のリルを抱えたマリアンが呟くとレイヴァンは彼女との距離を詰めて答えた。
「どうかしたの?」
「この町では、あんたは人気者のようだ」
何も解らず首を傾げるマリアンに対してレイヴァンは真剣な眼差しで周囲の警戒を続ける。
「人相の悪い連中が閉まった店の奥から物欲しそうにあんたを見ている。 良い品がやってきたとでも思っているのだろう。 俺から離れないようにな。 ……何より今は不本意だろうが奴隷らしく頼む」
マリアンが無言で頷くとレイヴァンは視線に気がつかない振りをして歩き続けた。
これほど人の少ない町で奴隷市を開催すれば町人が気付かない訳がない。
しかも先程慌ただしく馬車が駆け込んだばかりなのに、この静けさ。
商人のダグラスは暗躍していると踊り子のフィーネが言っていたが、むしろあからさまに活動していると言って良い。
もしかしたらここは活動のために作られた町かもしれない。
そうなると町の人たちは全てダグラスの一派であり、騒ぎを起こせば町全体を敵に回すことになるということ。
何とも厄介な話だ。
正面突破は考え直すべきだろうか?
「レイヴァン、ありましたよ。 盾と蛇の看板のお店です」
目的地を先に見つけだのはマリアンだった。
声につられ彼女が指し示した店の入り口を見たレイヴァンはすぐに表情を引き締める。
店の外にまで剣呑な気配が漂っていた。
酒場とは程遠い雰囲気。
この店は公にできない商売のために作られた店なのかもしれない。
そして、このような店を待ち合わせ場所に指定してきたあの男は素直に仲介役をするつもりはないらしい。
おそらくは多勢で脅迫してマリアンを奪い取り、自分たちの奴隷として売りさばぐ魂胆なのだろう。
レイヴァンは鼻で笑うと腰に携えた剣の位置を直してからマリアンを連れ店の扉を押した。




