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事件の真相の一片を掴んだレイヴァンは更に続けた。
「ところでものは相談だが、ダグラスの旦那のところまでの案内や取り次ぎをしてもらえないだろうか? 正直なところ、この地方には疎く、訳ありで町ではあまり顔を見せたくないんだ」
「それは構わないですけど…… こっちの方は?」
男は親指と人差し指で輪を作るとレイヴァンの前でちらつかせた。
「そうだな…… この女が売れたら、金額の一割をお前に仲介料として払おう」
「二割は欲しいですね」
がめつい男に思わず口元が緩んだ。
無論マリアンを売るつもりはない。
ダグラスの居場所を突き止めたら、この男と関わることは二度とないだろう。
全ては口車なのだが、ここまですんなり行くとは。
「解った、二割出そう」
「そうこなくっちゃ! なら、これで契約成立ですね。 早速町に行って根回ししておきますから、あなたはゆっくり町に来て下さい」
「町についたら、どうすれば良い?」
「まずは酒場に来て下さい。 盾と蛇の描かれた看板が目印です」
「目立ちたくないのだが?」
「大丈夫です。 その店は我々のような者たちが集う店ですから、無用な詮索はされませんよ。 続きはそこで話します」
レイヴァンが頷くと男は町に向けて駆け出した。
治癒術が効きすぎたのか、金に舞い上がっているのか凄い勢いで走っていく彼は、瞬く間に視界から消える。
そこでようやくレイヴァンは表情を緩め一息ついた。
結果的には襲われている馬車を助けて正解だった。
思わぬところで貴重な話を聞けたのが何よりだ。
封印の楔のことを知っているとなると、ダグラスは上級悪魔の可能性が高い。
今回こそメフィストフェレスの情報を手に入れ確実に討つ。
逃がすものか。
左手を強く握り締め意気込んでいると隣のマリアンに名を呼ばれた。
見れば彼女は明らかに不服そうな表情をして睨んでいる。
有無を言わさずいきなり身売りされると聞かされれば、流石に温厚なマリアンも怒り心頭のようだ。
いきなり強く腕を掴んだことも原因の一つらしい。
彼女への謝罪とこれからの策を説明しながら歩き続けると、納得してもらえた頃には目的の町へとたどり着いていた。




