~ 22 ~
「すまないが、この男の手当てを頼む」
「もちろんです」
マリアンは男の横に座ると手をかざし意識を集中する。
程なく男は淡い光に包まれ、しばらくすると傷は癒え意識を取り戻した。
レイヴァンは呼吸を整えるマリアンを後ろに下げると彼に詰め寄った。
「あんたらが町に運び込もうとしていた物はなんだ?」
鋭い視線で睨みつけると男は何が起きたのかと戸惑う様子を見せる。
「レイヴァン、彼は意識を取り戻したばかりなんですよ? 無茶にも程があります」
「悪いが少し黙っていてくれないか? ……あんた、話さないならもう一度眠ることになるぞ?」
「俺たちが運んでいたのは人だよ」
脅しが効いたのか、意識が未だ朦朧としているからなのか、男はすんなりと口を開いた。
その言葉にレイヴァンは思うところがあった。
「なるほど、あんたらは奴隷商人と言ったところか」
男は答えを返さなかったが、一瞬泳いだ視線をレイヴァンが見逃すはずはなかった。
どうやら勘ぐったとおりのようだ。
「そう警戒するな、俺もあんたと同じような者だ」
その一言に相手は少し表情を緩めた。
瞬時にこの男は付け入る隙が多いと判断し、何事でもないように平然と話を続ける。
「俺もこれからダグラスの旦那に、この女を届けるところだったんだ」
彼女には悪いと思いつつも強引にマリアンの腕を捕まえ男の前に突き出すと、痛みに表情を歪めた彼女を見て男は満足気な笑みを浮かべた。
「こいつはかなりの上玉ですね」
「これなら金貨五百枚は下らないと考えている」
「たしかに良い値が付きそうです。 ……でも一人だけなんですか?」
「こんなご時世だからな。 馬車は危険と判断して一番金になりそうな奴を連れてきたまでだ。 現にあんたは俺が通らなかったら今頃悪魔の胃袋の中だぞ」
「違いないです。 けど、今回は危険に身を晒す価値があるでしょう。 何せダグラスさんが求めている人間だったら、金貨二万枚ですよ?」
「金額に魅力があるのは解るが、死んだら元も子もないだろう。 それに旦那が求めている人間なんて本当にいるのか?」
「たしかに封印の鎖とか言われても学の無い俺らには何のことかさっぱりですしね。 とりあえず手当たり次第捕まえてきましたよ」
「それを言うなら封印の楔だろう? そんなことで大丈夫か?」
「あれ? 間違えてました?」
特に恥ずかしがる訳でもなく愛想笑いを浮かべ頭を掻く男。
彼がレイヴァンの目が鋭く光ったことに気がつくことはなかった。




