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二人が同時に振り向くと円の中心には、すらりと背の高い男が立っていた。
髪は白髪混じりで立派な口髭がある。
彼の背中にも黒い羽根があり上級悪魔だと一目で解った。
「あまり悠長なことは言っていられないようです」
「それはどういうことですかな?」
「蝙蝠が運んできた噂がどうやら本当だということです」
「ミカエルの剣を持つ人間ですか」
「しかも先日はオールトの街でアスモダイを討ったとか」
「心配することはありませんよ、ガープ。 所詮アスモダイは筋肉の塊のようなもの。 我々は彼と違いココがあります」
マモンは笑いながら頭を二度指先で叩いてみせる。
「マモン、君は楽観的過ぎるのではないか?」
「とんでもない。 私はただ自分の力に自信があるだけですよ。 それに、この建物に張り巡らせたあなたの魔法陣の中にいる限り、我々が負けることはありません」
「無論、私も人間如きに殺られるつもりはない。 ただ用心をした方が良いと言いたいのです」
「そんなものは取り越し苦労に終わりますよ」
マモンは大声で笑いながら手にしていた酒を煽った。