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最終話:みゆ先輩の笑顔

【SIDE:倉敷貴雅】


『ロリッ娘×ツンデレ×巨乳=最高!』

 

 それがコードネーム「146-86」改め、「147-88」の魅力らしい。

 その意見には同意だが、人の恋人を勝手に噂の対象とするな、と言う独占欲もある。

 だが、彼らにとってみれば俺は学園のアイドルを落とした敵であり、独占欲をふりかざそうものなら、俺は体育館の裏へと呼ばれる可能性が多いので大人しくしておいた方が言葉通り、身のためだろう。

 先日のみゆ先輩の非公式プロフィールが男子生徒の影の話題をさらう中、俺はみゆ先輩と共に学園の屋上でのんびりとした昼の時間を過ごしていた。

 

「――貴雅、私は思うのよ。恋って人を幸せにするものだって」

 

 いきなり、みゆ先輩が妙な事を言い出すので、俺はさっと彼女の額を手で触れる。

 体温は平温、別に熱っぽいとかじゃない。

 

「……熱でもあるのか、という定番行為をしてみたり」

 

「するにゃ!?あのねぇ、私だって真面目な時ぐらいあるの。OK?」

 

「ふーん。それで、何でそう思ったんだ?」

 

 彼女はお茶を飲みながら食べ終えた弁当箱を片づける。

 ちなみに俺も彼女手作りの弁当を食べている最中だ。

 何気にみゆ先輩は料理が得意なんだよな、この卵焼きも美味いわ。

 

「貴雅と出会って半年くらい経つじゃない。半年で私の人生は大きく変わったと思うの。そりゃ、もう360度ぐるりって感じ?」

 

「それ、一周して戻ってるから。頭いいくせに、子供っぽい間違いするな」

 

 彼女は「うるさいなぁ」と唇を小さく尖らせる。

 また何か企んでいる様子だが、素直に黙っておこう。

 俺も食事を終えたので先輩に食べ終わった後の弁当の容器を渡す。

 何かこういうの恋人っぽくていいとか思ってる、自分がちょいと恥ずかしい。

 

「……貴雅のおかげで私は恋を知ったわけじゃん。恋愛するって楽しいだけじゃなくて、大変なんだ。その経験を経て、私は今、貴雅の恋人をしている。それまでの私は恋がこんなに楽しいモノだって知らなかったもの」

 

「まぁ、俺もそれなりにみゆ先輩のおかげで楽しませてもらってるよ」

 

 相変わらず、ロリ先輩はやる事が子供っぽくて迷惑をかけられる事もある。

 だけど、可愛いという意味では文句もない。

 

「貴雅に出会わなければ私は今の幸せを感じられなかったんだなって……」

 

 そう言ってもらえるのは嬉しいが俺は逆に立場を苦しめている場合もある。

 

「俺もみゆ先輩に出会わなければ、近所で『あら、知ってる奥さん。倉敷さんところの次男さん、幼女を恋人にしているらしいわよ』という非常に不愉快な噂もされずにすんだだろうがな。アレの噂を消すのにどれだけ苦労したか」

 

「そっち!?しかも、私は幼女じゃない!」

 

「……危険人物扱いされそうだった俺の悲しみを少しは理解してくれ」

 

 危うく、ご近所さんに俺はロリコン扱いされそうになっていたのだ。

 まぁ、そんな悩みも些細だと思えるほどにみゆ先輩との関係自体は良好だ。

 話を戻してみゆ先輩は快晴の青空の下で満面の笑みで言う。

 

「私は貴雅が好き。最高の彼氏だと思ってるよ」

 

「俺もみゆ先輩の事が好きだぞ。時々、ものすごく子供っぽいが可愛いからな」

 

「それ、褒めてないよね?褒めてないでしょ?」

 

 今にも噛みつきそうな猫のような顔をして迫る彼女。

 俺としては可愛いと思って褒めたつもりなのだが、伝わっていないようだ。

 俺はみゆ先輩の小さな身体を抱き上げる。

 抱きしめても腕の中でもがくような暴れる先輩。

 やれやれ、本当に猫のような子だ。

 ひとしきり暴れて大人しくなったみゆ先輩は俺に抱きしめられながら、

 

「そうだ。明日、私のパパに会ってくれない?」

 

「……またかよ!?あ、あの人はあんまりいい思い出がないんだが」

 

 いきなり漫画みたいに模造刀で切りつけてきた人だぞ。

 みゆ先輩の事を溺愛するあまり、俺を敵対視している。

 俺の立場を知ってから直接攻撃はないが精神攻撃をしてくるのだ。

 

「心配しなくても、今回は大丈夫だよ……多分?」

 

「その多分が怖いんだが。何で今さら会わなきゃいけないんだ?」

 

「たまにはこっちの家にも遊びに来てね、ってママが言ってたからだよ。ほら、私ってよく貴雅の家に遊びに行くじゃない」

 

 主に家に来る理由は天音に会うだけで、俺に会いに来てるわけじゃない。

 

「それで、みゆ先輩の家に来い、と。みゆ先輩のお母さんに会うのはいいんだよ。優しいし、お料理も上手だからな。だが、あのみゆパパだけは厳しいぜ。低姿勢になられるのも困るし、敵対されても困る」

 

 今でも思い出すだけで背筋が凍る、娘を持つ世のお父さんの典型的なタイプだ。

 

『……うちの美結ちゃんに手をだしたら、どうなるか分かってるんだろうな?ん?』

 

 初対面ではヤクザさんかと思ったくらいに怖いお人でした。

 

「パパもいつ来るんだって、楽しみにしていたよ?」

 

「その楽しみは俺にとっては別の意味での楽しみに聞こえるよ。娘を持つお父さんってのはそれなりに男に厳しくて当然だとは思うがアレは変だ。娘を溺愛しすぎてるだろ」

 

 それだけ愛されて育ったからこそ、今のみゆ先輩があるのだと思うけどな。

 みゆ先輩は俺に甘えるように抱きつきながら笑う。

 小柄で腕の中にすっぽりと収まるサイズの先輩は抱き心地のいいぬいぐるみのようだ。

 

「今、私の事、可愛い♪とか思ったでしょ?」

 

「……あ、あぁ。そんな感じかも」

 

「あははっ。嬉しいなぁ」

 

 事実を本人に言うと傷つけるだけでなく、怒って拗ねるので言わないでおこう。

 可愛いのは確かだ、最高の恋人だとも思ってる。

 だが、しかし、交際半年になっても体格の違いってのは埋まらないわけで。

 

「みゆ先輩も、もうちょっと身長があればなぁ……」

 

「ぐさっ!?今、私のガラスのように割れやすいハートを傷つけたわね」

 

「どの辺が繊細なハートなのかは分からないが、こちらの要望だ。ほら、スタイルはいいんだから、身長さえあれば最高なのに」

 

 小柄で可愛いからこそ、ロリ先輩がロリ先輩たる所以なのだけど。

 

「私だって、身長があればって思うけど、成長しなかったんだからしょうがないじゃん。牛乳だって毎日、飲んでたのに~っ」

 

「それで別の場所だけ大きくなった、と。痛いっ、いきなり何をする!?」

 

 俺はひじ打ちをかましてくる先輩に「一言よけい」と怒られた。

 

「でも、いいんだもんっ。小さくたって、私を愛してくれる恋人がいるわけだし」

 

「……え?どこに?」

 

「貴雅のことだよ!違うの、違うんだ……ぐすっ」

 

 泣き真似をする彼女に俺は勝てない、これもまた先輩のずるさだ。

 俺もいいように彼女にからかわれているな。

 

「あー、はいはい。俺でした、先輩の事が好きですよ(棒読み)」

 

「棒読み禁止!?貴雅って本当に私の事が好きなのか、時々、微妙に不安になるわ」

 

 先輩はそっと俺から離れると頬にキスをしてくる。

 

「……まぁ、素直じゃない貴雅の気持ちはちゃんと分かってるから」

 

「たまにみゆ先輩が年上っぽいな、と思わされるな」

 

「いつでも思ってなさいよ。私は貴雅よりも年上のおねーさんなんだからねっ。もうっ、ホント生意気なんだからぁ」

 

 いつものやり取り、いつもの触れ合い。

 こうしてバカップルみたいな時間を過ごすのが楽しい。

 偶然だがみゆ先輩と出会い、彼女と恋人になってからの俺の人生は確かに変わった。

 

「でも、大好き。生意気でも可愛げなくても、好きだよ、貴雅」

 

 みゆ先輩の笑顔に俺は「可愛いな」と思わず口に出してしまう。

 これから先も先輩には困らせ続けられるんだろう。

 だけど、そんな先輩だからこそ俺は好きなんだと思う。

 春の陽気に包まれながら俺達は春風に吹かれながら、見つめ合って笑い合う。

 

「……いい天気だな。先輩、今度はデートでどこかに出かけるか?」

 

「いいよ。その時はまたお弁当を作ってあげる」

 

 ゆっくりと雲が流れていく群青色の空。

 俺はみゆ先輩の柔らかな薄桃色の唇にキスをした。

 

「――私だけを見て、恋をして。他の子は見ちゃダメなんだから」

 

 身体が小さくて、胸だけは大きく、性格は強気で可愛い美少女『コードネームは147-88』。

 初音美結は俺の最高の恋人だ。

 

【 THE END 】

 

これで完結です。初音美結について。みゆ先輩、ロリなのに巨乳。そんでツンデレ。初恋未経験なので、貴雅にいろいろと迷惑をかけながらも成長していきました。名前の初音みゆ=初●ミクとよく言われますが……違います、ネタにしてたけど(汗)。ミクと似ているのに気付いたのは後の事です(笑)。

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