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第38話:コードネームは「147-88」?

【SUDE:倉敷貴雅】


 季節の巡りは早く感じる。

 長い冬が終わり春を迎え、4月に突入。

 2週間の春休みも無事に何事もなく終了して新学期を迎えた。

 みゆ先輩との交際も、彼女がゴスロリ系のファッション雑誌で期間限定モデルをして彼女の人気を高めたくらいで他に変化することもなく順調だ。

 交際自体も好調でついに4ヵ月目だ。

 喧嘩という喧嘩もせず、デートを積み重ねている。

 そして、本日を持って俺は高校2年生になる。

 あのロリ先輩は見た目が小学生のくせに、高校3年生という節目の年を迎えるのだ。

 頭はなぜかいいので大学受験もすんなりとこなせるだろう。

 

「ふわぁ……」

 

 俺は長ったらしい校長先生の言葉がようやく終わり、新学期まもない教室の空気に触れながら欠伸をしていた。

 なぜ春先と言うのはこんなにも眠くなるのだろうか。

 春眠なんたらかんたら、欠伸をしてもし足りない。

 家に帰ってさっさと寝たいのだが、残念な事に本日はまだ身体測定が残っている。

 面倒だがしかたあるまい。

 

「……貴雅ちゃん、ずいぶん眠そうだね」

 

 俺に声をかけてきた美少女は宗田華奈。

 今年は同じクラスになった俺の幼馴染でもある。

 性格に多少難があり、以前にみゆ先輩と問題もあったことがある。

 だが、俺自身は別に華奈に思う所はない。

 話せばそれなりにいい奴だからな、男の評判も高い。

 

「そりゃ、春だからな。眠りたりないものさ。それより、華奈も今年は一緒のクラスか」

 

「うん。中学以来だから久しぶり。よろしくね、貴雅ちゃん」

 

「まぁ、いろいろと頼むよ。ふわぁ、やべぇ、眠いわ」

 

 昨日、徹夜してまでサッカーを見ていたのが悪かったのだろう。

 これだけ眠気がくるとマジでキツイ。

 

「……うぅ、俺はもう限界だ」

 

 そのまま俺は先生が来るまで机に頭をのせて寝てしまった。

 春はどうしてこんなにも眠いのだろう。

 

 


  

 さて、身体測定のために無理やり担任教師に起こされた俺は体育館を回っていた。

 身長が少しだけ伸びた。

 すでに中学の時にずいぶん伸びたので高校ではあまり変化はないようだ。

 

「いかん、重大事件だぞ。貴雅、噂のみゆ先輩がまた伝説を生んだ」

 

「いきなりなんだ?今度はどうした?」

 

 友人たちが俺を囲んでの報告に頭を抱える。

 今度は何をしでかした?

 

「それが実はみゆ先輩のコードネームが変わりそうだ。という情報をたった今、勇者な生徒のひとりが手に入れてきた。その勇者のなれの果てがあれだ」

 

 彼らが指差す方向には教師に両脇を掴まれて連れて行かれる男子生徒が……。

 

「ふははっ、我が生涯に悔いなしっ!」

 

「こらっ、叫んでないでさっさと歩け」

 

「我らのリビドーを抑えられる者などいない。勝者は我らだ」

 

 何で連行されているんだ、あれ?

 俺の微妙な視線に彼らは答える。

 

「彼がこっそり女子の身体測定結果を盗み見てくれたおかげで情報漏洩したわけだ。我らは彼のような尊い犠牲を忘れはしない。勇者に敬礼!」

 

「どうでもいい戦いをしているな。心配せずとも処分保留で彼はそのうち解放されるだろ。教師もそこまで暇じゃない」

 

 そんな事に命をかけてどうする。

 ふぅ、あれもみゆちゃんファンクラブとか言う連中のひとりなのだろうか。

 

「それで彼がそこまでして手に入れた極秘情報を知りたくないか?」

 

「いや、別に。何か気になるなら本人に聞けばいいだけだし」

 

「な、何と言う羨ましい奴だ。お前に独占されるのは何とも腹立たしい限りだ」

 

「まぁ、一応聞いておくけど、何だったんだ?」

 

 俺の問いに彼はにやっと嫌な笑顔を浮かべて、

 

「ふふっ、気になるか、気になるだろう!?」

 

「……いや、そこまで気にならない。本人に聞けば済むって言ってるだろ」

 

「待て、待つんだ、貴雅。せっかくの犠牲者の苦労を無駄にする気か?」

 

 犠牲者って大層な言い方をするがただの覗き魔だろうが。

 彼らはもったいぶるのをやめたらしく、俺に堂々と言い放つ。

 

「本日より、コードネーム“146-86”と呼ばず、コードネーム“147-88”と呼び改めることになったのだ。……ありえないよな、あの素晴らしい体型。まさに神が与えた最後の奇跡。魅惑のボディーに目が釘付けだ」

 

「ふーん……身長は1センチ伸びたのか」

 

 とっくに成長期は終わってるとばかり思っていたぞ。

 だが、俺の方も身長が数センチ高くなったのでその差はさらに広がっている。

 デートする時に並ぶとどう見ても妹扱いなのが本人は大いに不満らしい。

 身長差があるカップルって結構、面倒だったりする。

 

「……何だ、その淡白な感想は?もっと何かあるだろ?感動しないか?」

 

「ある意味、まだ大きくなるのかと言う事に関してびっくりしている。言っておくがお前らのと違う部分が、だがな」

 

 明らかに彼らの意識は147ではなく88の方へと向いている。

 男子諸君の憧れなので、分からない気持ちはないが、自分の彼女なので露骨な態度はやめてくれと言いたい……。

 それにしても、先輩は出会った頃とあまり変わらない気がする。

 あのロリ先輩の成長と言う成長を感じられない。

 そうか、146-86っていうのは去年の春先の情報だったから俺が出会ったころには既にサイズ的には変わっていたと言う事かもしれない。

 まぁ、本人はきっと身長が伸びた事を喜んでいるだろうから黙っておくことにしよう。

 

 

 

 

「あーっ、貴雅がいる。いいタイミングで会えたにゃー♪」

 

 俺の身体測定が終わり、のんぶりと中庭でくつろいでると、無駄に元気なみゆ先輩がやってきた。

 何だか良い事があった様子で元気を増量中と言った感じだ。

 身体測定中なので、普段は見慣れないジャージ姿だ。

 

「ふふふっ、聞いてよ。私ね、実は……」

 

「俺は身長が2センチぐらい伸びたけど、先輩はどれくらい伸びた?」

 

「がーんっ!?……わ、私?それは、その……」

 

 先に俺から身長の話をしてやると先輩の顔色が変わる。

 その瞳は「空気読んでよね」と言ってそうだ。

 先制攻撃は効果抜群、彼女はぐったりとうなだれながら、

 

「……センチです」

 

「よく聞こえないぞ。ワンモアプリーズ」

 

「1センチだよ。うわぁーん。これでも成長期が終わって伸びた事にものすごく喜んでいたのにー。貴雅ってホントに意地悪するし。ちょっと自慢しようって思ったのに、ぐすっ」

 

「先輩が可愛くてついな。ほら、拗ねるな。よかったな、1センチでも伸びて。女の子で伸びるって結構大変だろ?」

 

 俺の場合も中学の時にある程度伸びきってるから、それほど大きく変化しなかった。

 本気で拗ねて唇を尖らせているので慌ててフォローする。

 

「でも、貴雅って今、何センチになったの?」

 

「188センチだけど?」

 

「お願いだからそれ以上、身長を伸ばさないでください。これ以上、身長差が開くと本気で困るもん。ダメだからね?」

 

 そんな無理なお願いされても困る。

 まぁ、少なくともこれ以上はそれほど伸びないだろ。

 俺の成長気もとりあえずは終息した感じがする。

 

「でも、先輩は胸の方も大きくなったか?」

 

「きゃっ!?も、もうっ、そーいうところだけ見ないでよ」

 

 相変わらず、一部分だけの成長は続いている様子だ。

 俺はみゆ先輩とじゃれていると華奈が目の前を通って行く。

 

「よぉ、華奈。身体測定はどうだった?」

 

 俺が声をかけると、みゆ先輩はなぜか俺の影に隠れてしまう。

 

「貴雅ちゃん。そちらは……美結先輩でしょ?何しているの?」

 

「これは気にしなくていい。それより、どうだった?」

 

「めっちゃ、最悪。身長は伸びないわ、スタイルもさほど変わらないのに体重だけが……って言う感じ?まだまだ許容範囲内だけどね。はぁ、しばらくダイエットします」

 

 華奈は苦笑いを浮かべて言う。

 スタイルも抜群と言っていい体つきなのだが、どこが気にする必要があるのだろう。

 俺は彼女にフォローではなく事実を込めて、

 

「そんな細かいことを気にしなくても十分、華奈は綺麗だから心配するな」

 

「ありがと。でもね、貴雅ちゃん。そーいうセリフを恋人の前でしちゃダメだよ?」

 

 華奈の指摘に俺は隣のみゆ先輩に視線を落とす。

 彼女は今にも噛みかかろうとする猛獣のごとく鋭い瞳をしている。

 

「うわぁ!?な、何だよ、みゆ先輩」

 

「……私の時は意地悪して褒めてくれなかったのに。この扱いの差は何?」

 

「いや、これは、その……」

 

 困り果てる俺を横目に華奈は「気をつけてね」と言い残して去っていく。

 しまった、選択肢を間違えた。

 

「――前から気になっていたんだけど、ちょっと話し合いましょう」

 

 体格差を感じさせない堂々とした彼女の威圧感たっぷりな言葉。

 俺は素直に「ごめんなさい」と頭を下げた。

 季節は春、桜の花が舞い散るその季節、春の嵐が巻き起ころうとしている。

 

「わ、私だって脱げばすごいんだからねっ!?」

 

「おい、こらっ。意味分かって言ってるのか?ロリ先輩」

 

「た、多分。ほんのちょっとだけ。貴雅って他の女の子に色目つかいすぎなのよ。大体ね……」

 

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