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第27話:セカンド・インパクト

【SIDE:初音美結】


 風邪をひいてせっかくのクリスマスデートはつぶれちゃった。

 でも、彼と一緒にクリスマスを過ごせたので悪くはない。

 それから数日後、風邪も治して完全復活した私は貴雅と2度目のデートを楽しんでいた。

 今日は駅前の繁華街でのショッピングを中心にしたデート。

 

「にゃー、ここはどこ?私は誰?」

 

 ……の、はずだったんだけど、まさかの迷子になってしまった。

 さっきまでは仲良く買い物をしていたんだけど、私がちょっと駅のトイレに言ってる間に貴雅が行方不明に……というか、私がはぐれたんだけどね。

 荷物は彼に預けてたので携帯電話も持っていない。

 

「はぅ、どうしよう、どうしよう~っ」

 

 辺りを見渡しても貴雅の姿はなく、ジッとしている事もできず。

 

「ちょっと待っていて、と別れた場所はここのはずなんだけど」

 

 場所を間違えて慌てて戻ってきた時には貴雅はいなっかった。

 ぐるぐる、ぐるぐると同じ場所を回ってもいないし。

 

「せっかくのデートなのに、こんなミスしちゃうなんて……」

 

 ぐすっ、と私はへこんでいると、前から歩いてくる小夜子を見つけた。

 なんてタイミングでお友達と会うんだろう、ラッキー。

 

「あ、小夜子だ。小夜子~っ!」

 

「ん?あら、美結じゃない。どうしたの、ひとりで泣きそうな顔して」

 

「うえぇーん。助けて、今、ちょっとピンチなの」

 

 こういう時に小夜子はとても頼りになるから、助かるんだ。

 私は事情を話すと、小夜子は呆れた声で私を笑う。

 

「美結らしいわね。そう言うことなら、私が連絡してあげるわ。自分の携帯電話の番号くらい覚えておいて、公衆電話でかければよかったのに」

 

「あっ、その手もあった……って、今時、公衆電話を探す方が大変じゃない」

 

「ここは駅なので探せばすぐに見つかるはずよ。そんな事にも気づかないほど不安だったのかしら?本当に可愛いわね、美結って(バカっぽいのが見ていて楽しい)」

 

 はぅ、ちょっと迷子になったことに動揺してた。

 こんな不安な気持ちって誰でもあるよね?

 というわけで、小夜子は貴雅の携帯電話に電話をかけてくれる。

 

「やっほ、貴雅クン。そうよ、私。目の前に何か泣いている猫を見つけたの。そう、猫ちゃん。飼い主のキミが引き取りに来なさい。お姉さんがただいま保護中よ」

 

「誰が猫だよ、にゃー」

 

 迷子の小猫ちゃん扱いですか、うぅ……。

 子ども扱いされてばかりいる私だって、怒る時はあるんだぞ?

 

「アンタよ、アンタ。迷子の子猫ちゃん、大人しくしておきなさい。え?分かったわ。ほら、貴雅クンが電話に代わって欲しいって……別れの電話かしら?」

 

 彼女から携帯電話を借りると、貴雅の声が聞こえた。

 その声に迷子の子供が親にあえたように不安が消えていく。

 

『おぅ、みゆ先輩。今どこにいるんだ?さっきから待ってるんだが、全然来ないし』

 

「え?どこって駅の裏口だよ。貴雅はどこにいるの?」

 

『裏口って北側だよな?俺がみゆ先輩を待ってるのは東側だぞ?』

 

「嘘だぁ。だって、目印も……あ、そうか。ここじゃなかったの。私、勘違いしていたかも。目印にしていたお店って前はこっちじゃなくて、東口にあったんだよね」

 

 私が勘違いしたのは洋服のお店、以前はこちら側ではなく東口にあったの。

 その店舗の見た目が以前と変わっていないからつい勘違いしてしまったらしい。

 隣の小夜子は「方向を間違える時点でドジすぎ」とからかう。

 うるさいなぁ、ちょっとしたミスじゃんか。

 

『まぁ、みゆ先輩のドジ属性は今さらだから責めはしない。さっさと戻ってこい。ちゃんと小夜子さんにお礼を言うんだぞ』

 

「はーい。じゃ、すぐに行くから動いちゃダメだよ」

 

『――俺は最初から一歩も動いてねぇよ』

 

 そうでした、私のせいだったよね、ごめんなさい。

 私は気を取り直して、電話を切ると小夜子に返す。

 

「ありがとう、小夜子。助かったよ」

 

「連絡ついてよかったわね。それにしても、貴雅クンも美結につき合わされて大変じゃない。彼が優しい良い男でよかったわ。そうじゃなければすぐに別れてる」

 

「ふぎゅっ!?わ、別れるって私と貴雅はそんな危機ないもんっ」

 

 いきなりの小夜子の言葉に私は新たな不安を抱える。

 今まで貴雅に甘えてばかりで、彼にしてみれば私と付き合ってよかったと想ってくれているのかなって……。

 

「ネガティブ思考してもしょうがない。そう、私は彼に愛されているの。だから、大丈夫……だと思う。うん、彼の家族とも仲がいいし……問題はないっ、はず」

 

「だんだん自信がなくなってるみたいだけど?彼に甘えるのもいいけど、少しは好かれる努力もしなさい。貴雅クンの前にそれっぽい可愛い子でも現れたら、あっという間に愛想を付かされて、破局なんて展開に……」

 

「うにゃー。そんなの聞きたくない~っ。もうっ、小夜子が意地悪する」

 

 私は拗ねて唇を尖らせると、小夜子は微笑していた。

 この友達は頼りになるけど、すぐに私で遊ぶから困る。

 

「私はもういくから。じゃぁね、小夜子」

 

「えぇ。デートを楽しんでらっしゃい」

 

 小夜子と別れた私は早足で駅の構内を歩いて目的の東口へと向かう。

 すぐに出口を出ると私は貴雅が待っている場所にたどり着けた。

 ……たどりつけたんだけど、そこで私は予想外の光景を目にする。

 

「やだぁ、ホントにそう思う?だとしたら、嬉しいっ」

 

「ホントだ。俺は今日の髪型の方が似合うと思うよ」

 

 うぇ、何か嫌な場面に出てきたかも。

 貴雅は私を待っているはずなのに、なぜか他の女の子と雑談中。

 

「……誰?美人さんと会話なんて珍しい」

 

 はっ、これはいわゆるナンパという奴では?

 私が迷っている間に他の女の子にちょっかいだすなんて……。

 

「貴雅、待たせたわね。あら、そちらの女の子は誰かな?」

 

 どういう事情かは分からないけど、私は見ていられずに彼に声をかける。

 自分の彼氏がそんなひどい人間だとは思いたくない。

 

「どこまで行ってたんだよ。まぁ、いい。おかえり」

 

「……そちらの子は誰なの?誰?誰?」

 

 私が彼に詰め寄ると私の前にその子は間近に近づいてくる。

 私は威嚇するように相手にムッとした顔を見せた。

 

「本物だぁ。ねぇ、これって本物のみゆ先輩だよね?」

 

「俺は他にこんなロリ先輩を知らないぞ」

 

「めっちゃ失礼な事を言わないでよ」

 

 彼女は興味津々と言った風に私を見つめてくる。

 

「あの、一緒に写メ撮ってもいいですか?」

 

「え?あ、別にいいけど?」

 

 私が?マークを頭に浮かべるのをよそに彼女は私と一緒に携帯電話で写真を撮る。

 何が楽しいのか、笑顔を見せる女の子。

 結構な美人の子だ、貴雅の知り合いだとしたら、年下かな?

 

「ふぅ、いいじゃない。これで私の美少女コレクションもひとつ増えたわ」

 

「美少女コレクションって……相変わらずのようだな、華奈」

 

「まぁね。でも、貴雅ちゃん。こんなにも可愛い子が恋人の貴方なんて羨ましい」

 

 私を無視して会話を続けるふたり。

 あのぅ、無視されると寂しいから仲間に入れてよぉ。

 

「っと、そうだ。紹介するよ、みゆ先輩。俺の幼馴染の宗田華奈(むねだ かな)。俺達と同じ高校に通ってる、俺と同い年だ。偶然、そこで会って話をしていた」

 

「ふーん。幼馴染がいたんだ、可愛い子だね」

 

「あははっ、可愛い?当然ですけど、そう言ってもらえると嬉しいです」

 

 よほど自分を褒められると嬉しいようだ、しかもちょっとナルシスト系?

 私が妙な視線を向けると、彼女はすっと私に手を差し出した。

 

「みゆ先輩、初めまして。貴雅ちゃんの幼馴染で、心の恋人の華奈です。学園で噂のみゆ先輩に出会えて光栄ですよ」

 

「こ、心の恋人?何なの、それ?」

 

 思わぬ単語に動揺する私、だって恋人って……え?え?

 心の恋人って何なのよ?

 

「おい、華奈。余計な事は言うな。別に変な関係じゃない」

 

 貴雅は否定するけど、彼女は私にこう言ったんだ。

 

「本当の事でしょう。私たちが昔、こ……むぐっ」

 

 いきなり彼は慌てた様子で華奈さんの口をふさいだの。

 

「何でもないから。ホントに、気にする事じゃない。それよりも、こんな場所で迷子になるとはどんなお子様なんだ?」

 

「違うもんっ、迷子じゃないくて、迷っただけ!」

 

「……どこに違いがあるのか分からない。小夜子先輩がいなかったら、今日のデートはこれで終わってたかもしれないな。ほら、荷物を返すぞ」

 

 私にバッグを返してくれる貴雅。

 聞きたい事はあったけど、誤魔化されてしまった感じ。

 

「みゆ先輩と貴雅ちゃん、ふたりはデートの途中だったの?」

 

「あぁ。この先輩がこんな所で迷子になってな。待ちぼうけしてたんだ」

 

「だから、迷子言うなぁ。少し場所を間違えただけじゃない」

 

 うぅ、貴雅がいつものように意地悪する。

 けれど、隣にいた華奈さんは笑って言うんだ。

 

「貴雅ちゃんって昔から好きな子とか気に入った子にはよく意地悪していたクセがあったけど、まだ治っていないんだ?私もよくされてたもの。好きな子いじめ、少しはやめてあげてよね」

 

「うっさい。そんな昔の事は忘れてくれ」

 

 うにゅぅ、私のこと、やっぱり貴雅は気に入ってくれているんだ。

 意地悪は照れ隠しで、好きな子ほど意地悪しちゃうタイプなのかな……って、“私も”?

 何かが引っかかる物言い、何だろう……幼馴染ってこんなに親密なものだっけ?

 

「あっ、もうこんな時間。私も待ち合わせがあるから行くわ」

 

「おぅ、また今度な」

 

 彼女は貴雅に挨拶して私にも「それじゃ、さよなら。先輩」と頭をさげる。

 

「――ふふっ。みゆ先輩だけが彼の“特別”ではない、それを忘れずに」

 

 その去り際、彼女は私の耳元ににそんな意味深な言葉を囁いたの。

 その後、何もなかったかのように去ってしまう、華奈さん……。

 彼女は一体、貴雅の何なのよ!?

 何だか新たな波乱の予感、これっていわゆる幼馴染ライバルの登場なわけ!?

 んにゃー、私ってこんなのばっかりじゃない……どうしよう。

 

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